第30話

XXの真偽 ⅩⅢ
98
2020/04/04 15:01
瀬戸口せとぐち りゅう
最っ悪‥‥
私は戦う気満々の構えをしたのだが、慎先輩と龍先輩は嫌そうな顔をして構え始めた。
酒葉さかば みのり
先輩‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
うん。二人欠員がいるけど作戦通りでいくよ。
酒葉さかば みのり
はい!
瑞樹先輩は多分、後輩をとても大事に思うタイプ。
もちろん仲間や友達、先輩も大事に思っているだろうけど‥‥‥
話し方が凄く優しい。

後輩からの好感度良いだろうな~とか思いながら、私は能力を発動させる。
瀬戸口せとぐち りゅう
え、
楠木くすのき しん
うおっ!?
太くて硬いツルを出して慎先輩の右手首と龍先輩の左手首を巻いて繋ぎ、二人が30㎝以上離れられないようにする。
そしてまた、そこから一本のツルを伸ばして瑞樹先輩の右手首に巻く。

これで慎先輩と龍先輩は、瑞樹先輩の半径5mより外には絶対に離れられない。
楠木くすのき しん
え、ちょ、何?これ。
瀬戸口せとぐち りゅう
落ち着け。瑞樹には俺たちの能力を無効化することはできないから実ちゃんだけ注意してれば良い。
楠木くすのき しん
だったら何でツルで繋いだんだ‥‥?
瀬戸口せとぐち りゅう
さぁ。逃げないようにじゃない?
こそこそ話しているつもりなのか、こちらをちらちらと見ているが‥‥‥丸聞こえである。
瀬戸口せとぐち りゅう
んで、切れ。
楠木くすのき しん
え、ま、まだ心の準備が‥‥‥
瀬戸口せとぐち りゅう
そんなん知らんわ!!
龍先輩はそう言って慎先輩の手からナイフを奪い、慎先輩の腕に容赦なく刺す。
楠木くすのき しん
うわぁぁぁぁぁ!!ちょ、痛い!!!
酒葉さかば みのり
うわぁ‥‥痛そう。
楠木くすのき しん
痛そうとかそんな比じゃねぇし!まじ痛ぇ‥‥‥
龍先輩が刺した所が丁度クリティカルヒットしたのか、痛い痛いと喚く慎先輩。
何か本当に可哀想になってきた‥‥‥
瀬戸口せとぐち りゅう
ほら、慎。攻撃。
楠木くすのき しん
分かってるって‥‥まじ痛ぇ‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
いつまでそれ言ってんだよ慎‥‥
瑞樹先輩は呆れたように笑う。
慎先輩はすぅ、はぁ、と一度だけ深呼吸をしてから止まらず流れる血を硬化させた。
楠木くすのき しん
‥‥‥どっち。
瀬戸口せとぐち りゅう
どっちも。一気に倒しちゃえ。
楠木くすのき しん
無理ばっか言いやがって‥‥‥
慎先輩はそう言って、硬化させた血液を私たちめがけて放った。
瑞樹先輩は私を背中に隠して庇うように立ってくれる。
酒葉さかば みのり
先ぱ‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
大丈夫。じっとしてて。
瑞樹先輩が振り返って少し笑ったかと思うと、硬化されていたはずの血液がいつの間にか液体に戻り、瑞樹先輩の制服や顔に付いているだけだった。
千島ちしま 瑞樹みずき
うわぁ‥‥汚い。
楠木くすのき しん
汚いとか言うなし!!
瀬戸口せとぐち りゅう
‥‥‥待って、慎。それどころじゃなくなった。
怒る慎先輩をよそに、龍先輩は冷や汗をかきながら笑う。
楠木くすのき しん
は?それってどういう‥‥‥
瀬戸口せとぐち りゅう
慎。今の攻撃、どうして硬化がとけたんだと思う?
楠木くすのき しん
へ?
始めは間抜けな顔をしていた慎先輩だったが、自分の腕を見た瞬間徐々に顔が青ざめてゆく。

それもそのはず。
硬化させたはずの血が液体に戻った。
その上、龍先輩が治したはずの腕には傷跡・・が残っている。

つまり、だ。それは慎先輩と龍先輩の能力が弱まっている・・・・・・と言える。
楠木くすのき しん
まさか瑞樹‥‥‥!で、でも、血は落ちなかったし血は一応止まってるし‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
そりゃレア能力の無効化なんて無理だろ。
楠木くすのき しん
じゃあ何で‥‥‥
瀬戸口せとぐち りゅう
能力の半減・・
既に何かを悟ったような顔をしていた龍先輩が口を挟む。
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥まぁ、多分そうだと思う。
「半減しかできないからおかげでこれだよ」と笑って制服のジャケットを脱ぐ瑞樹先輩。

あ‥‥そっか。慎先輩の血が付かないように庇ってくれたのか。
千島ちしま 瑞樹みずき
んで、酒葉さん。そろそろだよね?
酒葉さかば みのり
あっ!はい!そろそろ効いてくる頃かと!
私たちの会話を不思議に思ったのか、慎先輩と龍先輩は首を傾げる。

私が慎先輩と龍先輩の手首にツルを巻いたのは逃がさないようにする為だけじゃない。
私が二人と瑞樹先輩とで違うツルを使ったのにも理由がある。

さぁ、先輩方。

────────の時間ですよ。

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