個人戦が終わり、俺たちはフィールドに呼ばれて集まった。
恐らく結果発表‥‥なのだろう。
ユリは笑いながら手を叩いて、捺祢と目を合わせる。
すると、捺祢は面倒臭そうに溜息を吐いて、一歩前に出た。
捺祢はそう言うと、ユリから一枚の紙をもらってそれを読み上げた。
龍はニヤリと笑って東と目を合わせる。
まぁこれが妥当‥‥なんだろうな。
三人とも能力がレアだから脱落は惜しいと思ったのかもしれない。
笧三君は予選をたった一人で勝ち抜いたこともあるし、何より弱点のないレア能力だからな‥‥
成瀬さんは嬉しそうに代々木先輩と草鹿君にハイタッチをした。
‥‥代々木先輩は明らかに面倒臭そうにしていたが。
それにしても、この高校にはもう一人レア能力保持者がいたはずだが‥‥脱落してしまったみたいだ。
レアの能力でも脱落はするのか‥‥
捺祢の言葉を遮った辻君を注意する国木田先輩。
隣で「親子かよ‥‥」と既視感のある声が聞こえたが、それは聞かなかったことにしよう。
自分の高校の名前が呼ばれて、俺は少し驚いた。
篠北高校は予選全員突破。つまりこの個人戦に一番多く出ている。
だから‥‥一番多く脱落者が出てもおかしくないのだ。
どうか、どうか、全員生き残ってくれ。
一人でも脱落者が出るのは嫌だ。
その瞬間、フィールドが静寂に包まれた。
計八名。
それって、つまり‥‥‥
呉さんの言葉に、篠北高校全員の肩の力が抜ける。
千早は相変わらずの真顔だが、どこか機嫌が良いようにも見えた。
酒葉さんが隣にいる四月一日君にグッドサインを送ると、四月一日君は珍しく笑って頷いた。
一霖はそう言って俺に笑いかける。
俺は一霖に笑い返して、グッドサインを送ってやった。
すると、ビチャッと音を立てて何かが俺の頬に付く。
俺は不思議に思い、自分の頬に手を当ててその手に付いたものを見る。
赤い。濁ったような赤。そして錆びた鉄のようなこの匂い。
俺の隣には、首と胴が切り離された脱落者の死体があった。
少し遠くにも、脱落者の首と胴が転がっている。
深海先輩と千早がユリに冷たい視線を送ると、ユリは血がべっとりと付いた剣から視線を外して不敵に笑った。
ユリの言葉と表情に、フィールドは静まり返る。
それを見かねたのか、捺祢は溜息を吐いて話しだした。
捺祢はそう言って片手を上げる。
あの時みたいに指パッチンをする気らしい。
捺祢はそう言って、拗ねるユリを横目に親指と中指を擦り合わせる。
パチン、と綺麗な音がフィールドに鳴り響いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。