第24話

XXの真偽
136
2020/03/14 14:02
個人戦が終わり、俺たちはフィールドに呼ばれて集まった。
恐らく結果発表‥‥なのだろう。
ユリ
はいは~い!皆おつかれ~!
ユリ
じゃあ早速!結果発表~!
ユリは笑いながら手を叩いて、捺祢と目を合わせる。
すると、捺祢は面倒臭そうに溜息を吐いて、一歩前に出た。
音羽おとは 捺祢なつね
‥‥生き残れる奴の名前を呼ぶ。返事はしなくて良い。
捺祢はそう言うと、ユリから一枚の紙をもらってそれを読み上げた。
音羽おとは 捺祢なつね
まず始めに春風はるかぜ高校から。
音羽おとは 捺祢なつね
瀬戸口龍、碑賀東、多岐朱音の計三名。
瀬戸口せとぐち りゅう
おっ、全員。
龍はニヤリと笑って東と目を合わせる。

まぁこれが妥当‥‥なんだろうな。
三人とも能力がレアだから脱落は惜しいと思ったのかもしれない。
音羽おとは 捺祢なつね
次、汐瀬しおせ高校。汐瀬高校は笧三拓のみ。
笧三君は予選をたった一人で勝ち抜いたこともあるし、何より弱点のないレア能力だからな‥‥
音羽おとは 捺祢なつね
次、せせらぎ高校。
音羽おとは 捺祢なつね
成瀬冴羅、草鹿春日、代々木暁の計三名。他の二名は脱落とする。
成瀬なるせ 冴羅さら
うおっ!やったぁ!
成瀬さんは嬉しそうに代々木先輩と草鹿君にハイタッチをした。
‥‥代々木先輩は明らかに面倒臭そうにしていたが。

それにしても、この高校にはもう一人レア能力保持者がいたはずだが‥‥脱落してしまったみたいだ。
レアの能力でも脱落はするのか‥‥
音羽おとは 捺祢なつね
次、鳳南ほうなん高校。
音羽おとは 捺祢なつね
辻林太郎、国木田た‥‥‥
つじ 林太郎りんたろう
うわぁっ!やったね先輩!二人とも生き残‥‥
国木田くにきだ 達也たつや
人が話している時は?
つじ 林太郎りんたろう
喋らない!
捺祢の言葉を遮った辻君を注意する国木田先輩。
隣で「親子かよ‥‥」と既視感のある声が聞こえたが、それは聞かなかったことにしよう。
音羽おとは 捺祢なつね
‥‥国木田達也、東堂猛の計三名。他一名は脱落とする。
音羽おとは 捺祢なつね
次、篠北高校。
自分の高校の名前が呼ばれて、俺は少し驚いた。

篠北高校は予選全員突破。つまりこの個人戦に一番多く出ている。
だから‥‥一番多く脱落者が出てもおかしくないのだ。

どうか、どうか、全員生き残ってくれ。
一人でも脱落者が出るのは嫌だ。
音羽おとは 捺祢なつね
酒葉実、四月一日柊也、楠木慎、呉葉月、千島瑞樹、福冨一霖、本能寺千早、深海霙の計八名。
その瞬間、フィールドが静寂に包まれた。

計八名・・・
それって、つまり‥‥‥
くれ 葉月はづき
ぜ、全員だぁぁ!!
呉さんの言葉に、篠北高校全員の肩の力が抜ける。
千早は相変わらずの真顔だが、どこか機嫌が良いようにも見えた。
楠木くすのき しん
おっしゃぁぁ!全員!
酒葉さかば みのり
やったね、柊也君!
四月一日わたぬき 柊也とうや
うん‥‥そうだね。
酒葉さんが隣にいる四月一日君にグッドサインを送ると、四月一日君は珍しく笑って頷いた。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
瑞樹!全員突破だよ!凄いね!!
一霖はそう言って俺に笑いかける。
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥そうだな。
俺は一霖に笑い返して、グッドサインを送ってやった。

すると、ビチャッと音を立てて何かが俺の頬に付く。
俺は不思議に思い、自分の頬に手を当ててその手に付いたものを見る。
千島ちしま 瑞樹みずき
は‥‥‥?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
み、瑞樹、それ‥‥‥
赤い。濁ったような赤。そして錆びた鉄のようなこの匂い。
音羽おとは 捺祢なつね
ユリ、もっと静かにやってほしかったんだけど。血が飛び散ってる。
ユリ
え~?別に良いじゃん、どうせ流れるものだし!
音羽おとは 捺祢なつね
周りの人にかかってるんだよ。もうちょい周りを見ろ。
ユリ
えぇ~!
俺の隣には、首と胴が切り離された脱落者の死体があった。
少し遠くにも、脱落者の首と胴が転がっている。
深海ふかみ みぞれ
‥‥私たちの目の前で殺すなんて、相当な悪趣味ですね。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
何?見せしめのつもり?
深海先輩と千早がユリに冷たい視線を送ると、ユリは血がべっとりと付いた剣から視線を外して不敵に笑った。
ユリ
私が悪趣味だって、もうとっくに気付いてると思ったんだけどなぁ~。まぁ‥‥見せしめも兼ねての公開処刑だよ。
ユリの言葉と表情に、フィールドは静まり返る。
それを見かねたのか、捺祢は溜息を吐いて話しだした。
音羽おとは 捺祢なつね
‥‥次のゲームに移る。
捺祢はそう言って片手を上げる。
あの時みたいに指パッチンをする気らしい。
ユリ
え~!捺祢待って!私がやりたい!
音羽おとは 捺祢なつね
いや、ユリはできないだろ。
ユリ
できる!
音羽おとは 捺祢なつね
かすってた奴が何言ってんだよ‥‥
捺祢はそう言って、拗ねるユリを横目に親指と中指をこすり合わせる。

パチン、と綺麗な音がフィールドに鳴り響いた。


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