第22話

XXの開花 XXⅧ
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2020/03/08 05:31
試合が終わり、東のもとへ戻って行く龍と多岐先輩。
龍は東からゲンコツを喰らったようで、自分の後頭部をさすっていた。
瀬戸口せとぐち りゅう
いってー‥‥まじで殴るとか容赦を知ろうよ東。
碑賀ひが あずま
心配かけんな。
瀬戸口せとぐち りゅう
東は俺の母さんかな?
碑賀ひが あずま
こんな阿呆産んだ憶えはない。
瀬戸口せとぐち りゅう
酷い‥‥
その会話を聞いて、まぁ何だかんだ言って仲良しなんだろうな、とか思った。
くれ 葉月はづき
し、心臓止まるかと思った‥‥‥
福冨ふくとみ 一霖いちりん
本当に死んじゃったら僕の方が心臓麻痺するよ‥‥‥
二人はそう言って自分の心臓を抑える。
千島ちしま 瑞樹みずき
一霖が心臓麻痺起こしたら今度は俺が心臓発作起こすからやめろよ。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
じゃあ心臓疾患で‥‥‥
楠木くすのき しん
お前らなんつー会話してんだよ。
慎が少し引き気味に笑って俺らにツッコミを入れた。
俺と一霖はそんな慎ににまっと笑う。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
これが僕たちの!
千島ちしま 瑞樹みずき
日常会話。
楠木くすのき しん
何それ怖っ‥‥
そんな会話をしながら横目で龍たちを見ると、龍は俺に気付いて手を振ってきた。
俺は手を振り返し、龍のもとへ歩いて行く。
楠木くすのき しん
どこ行くんだ?
千島ちしま 瑞樹みずき
ちょっと龍のとこ。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
僕も行く~!
楠木くすのき しん
んじゃ俺も!
くれ 葉月はづき
私も行く!
千島ちしま 瑞樹みずき
何か増えた‥‥
俺は少し笑って、その三人と一緒に龍のもとへ向かった。
多岐先輩は、龍と東の後ろで静かに観戦している。
瀬戸口せとぐち りゅう
よっ、瑞樹。
千島ちしま 瑞樹みずき
おう。試合お疲れ。
見た目よりずっと物腰柔らかく話し、よく笑う。
龍は相変わらずだ。
楠木くすのき しん
東も、龍にかつ入れたの案外格好よかったぜ。
碑賀ひが あずま
そりゃどうも。
東は始めから無表情だったが、慎の言葉を聞いて少し笑った。
それで少し、東ってこんな笑い方するんだな、と思った。
瀬戸口せとぐち りゅう
うわっ‥‥東が笑った!
くれ 葉月はづき
そ、そんな驚く‥‥?
瀬戸口せとぐち りゅう
だって東、焦ったり怒ったりすることはあっても滅多に笑わないから‥‥‥
碑賀ひが あずま
笑わなくて悪かったな。
瀬戸口せとぐち りゅう
お、怒るなよ~!
碑賀ひが あずま
怒ってない。
瀬戸口せとぐち りゅう
怒ってるじゃん!
碑賀ひが あずま
怒ってない。
瀬戸口せとぐち りゅう
えぇ~‥‥
龍は何とも言えない顔で東に寄りかかる。
東はそれに慣れているのか、大きな溜息をするだけだった。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
東君と龍君って結構仲良さそうだけどいつから一緒なの‥‥?
瀬戸口せとぐち りゅう
確か、東とは小学生の時から一緒だよな?
碑賀ひが あずま
まぁな。小学校はどっちも違ったけど空手習ってる道場は同じだったから。
瀬戸口せとぐち りゅう
そうそう。中学で一緒になった感じ。そんで高校も一緒。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
へぇ‥‥じゃあ幼馴染みなんだ!
碑賀ひが あずま
まぁ‥‥そういうことになる。
東がそう言って少し笑うと、龍は地味に腐れ縁だよな~と笑って、更に東に体重をかけた。
碑賀ひが あずま
龍、そろそろ重い。
瀬戸口せとぐち りゅう
あいよ。
龍は意外にも素直に東に体重をかけるのをやめる。
東には頭が上がらないって感じなんだろうな。
碑賀ひが あずま
あとさ、龍。“命懸け”は良いことだけど簡単に命を懸けて死ぬなんてことはするなよ。
瀬戸口せとぐち りゅう
えぇ~?何々?心配してくれんの?
碑賀ひが あずま
腐れ縁が死ぬのは目覚めが悪い。
瀬戸口せとぐち りゅう
やっさしー
碑賀ひが あずま
うっさい。
俺がそんな二人の会話を笑って聞いていると、俺の横を多岐先輩が通り過ぎていった。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
あっ!二試合も過ぎちゃってる!
楠木くすのき しん
えっ!?まじで!?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
だってほら、19って書かれた紙を持ってた霙先輩がフィールドにいる!
くれ 葉月はづき
わぁお。結構話しちゃったね。
千島ちしま 瑞樹みずき
じゃあそろそろ戻るか。
俺の言葉に三人は頷く。
千島ちしま 瑞樹みずき
ごめん、龍、東。また話そ。
瀬戸口せとぐち りゅう
おっけー!じゃあな!
龍はそう言って俺たちに手を振る。
東は何も言わなかったが、龍と同じように手を振ってくれた。

俺はそんな二人に手を振って、自分が座っていた席に戻った。

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