試合が終わり、東のもとへ戻って行く龍と多岐先輩。
龍は東からゲンコツを喰らったようで、自分の後頭部をさすっていた。
その会話を聞いて、まぁ何だかんだ言って仲良しなんだろうな、とか思った。
二人はそう言って自分の心臓を抑える。
慎が少し引き気味に笑って俺らにツッコミを入れた。
俺と一霖はそんな慎ににまっと笑う。
そんな会話をしながら横目で龍たちを見ると、龍は俺に気付いて手を振ってきた。
俺は手を振り返し、龍のもとへ歩いて行く。
俺は少し笑って、その三人と一緒に龍のもとへ向かった。
多岐先輩は、龍と東の後ろで静かに観戦している。
見た目よりずっと物腰柔らかく話し、よく笑う。
龍は相変わらずだ。
東は始めから無表情だったが、慎の言葉を聞いて少し笑った。
それで少し、東ってこんな笑い方するんだな、と思った。
龍は何とも言えない顔で東に寄りかかる。
東はそれに慣れているのか、大きな溜息をするだけだった。
東がそう言って少し笑うと、龍は地味に腐れ縁だよな~と笑って、更に東に体重をかけた。
龍は意外にも素直に東に体重をかけるのをやめる。
東には頭が上がらないって感じなんだろうな。
俺がそんな二人の会話を笑って聞いていると、俺の横を多岐先輩が通り過ぎていった。
俺の言葉に三人は頷く。
龍はそう言って俺たちに手を振る。
東は何も言わなかったが、龍と同じように手を振ってくれた。
俺はそんな二人に手を振って、自分が座っていた席に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。