第23話

昨日のこと
28
2023/04/21 21:24
金澤 結
(…言いすぎたかもしれない。)
私は玉座に座り、ひたすらに昨日のことを思い出す。
あの後佐々木くんが出ていって、私はしばらく無言になり、はっと思い出すように正気になった。呼び出したのはあのためじゃないのに…。言ってしまった。相手の心を傷つけてしまった。
金澤 結
もう、あの人のようにならないって決めたのに…
私は背後に広がる家族の絵を眺める。
そこには私の父が堂々といる。その姿が目に映る度に怒りを少し感じる。昔されてきたことを思い出す。
「はぁ。」とため息をつき前を向く。今日は珍しく誰も私に提案や商談をしに来ない。いつもだったら誰かしら来るのに…
目の前には長い赤い布が私を指し示すようにこちらに向かって伸びている。隣には使用人が立っている。なんなら、もう暇なのであの人の様子でも見に行くとしよう。
金澤 結
赤津さん。騎士団の様子を見に行っても?
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今崎 聡
なぁ、あいつなんかあったのか?
いつもの練習場にはいつも通りに練習試合をしている佐々木がいなかった。一人でぽつんと剣を振るい続けている。なんだか近寄りがたい。
宇和崎 咲
昨日、あいつだけ女王様に呼ばれてたしなんかあったんじゃないの?
今崎 聡
そうかなぁ…
視線を外すと練習場の端に女王様が来ていた。
今崎 聡
え!?女王いるんだけど!?
宇和崎 咲
ほんとね…最近、来ること多いわね。
佐々木の方を向くと女王様とバッチリ目が合っていた。
今崎 聡
うわぁ…バチバチじゃんか…
俺はその状況に不安を抱いた。
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金澤 結
(…真面目な顔してやってる…)
私が練習場に着くと少し周りがざわついた。そして佐々木君を見ると真面目な顔して剣を振るっていた。ピタリと視線があい、お互いが見つめ合う。相手は「何しに来たんだ?」と思っているのか、いつものわかりやすい表情じゃないのでわからない。
佐々木君がこっちに寄ってくる。
目の前に来る。
そして、言葉を発する。
佐々木賢人
何か…御用ですか?
金澤 結
あ、えっと…
口が籠もる。いきなりのことにびっくりしてしまった。
金澤 結
き、昨日はごめんなさいね…。その言いすぎて…
「謝る時は相手を見て謝りなさい。」親からいつも言われたことだ。完璧じゃなければならない家庭にいた私は謝ることが多かった。その度私は下を向いて謝罪をする。今日もそうだ。相手の顔が見れない。
佐々木賢人
大丈夫です。
意外な答えが返ってきてびっくりした。驚いた。
佐々木賢人
女王様の言うことは正しいですし。
佐々木賢人
女王様、耳、貸してください。
金澤 結
え?あ、
そして、私の耳元で囁くように
佐々木賢人
1週間、1週間以内に絶対に王国専属騎士になります。あなたのような人に俺はなりますんで。
私は驚きを隠せなかった。いきなり耳元で囁かれたのもあるが、たった1週間でなるというものだから目が点になった。
しばらく黙ったあと「なるほどね。」と言い、私も佐々木に囁いた。
金澤 結
私もあなたみたいに笑えるように、話せるように。そしてみんなと仲良くできるように。
佐々木は驚いた顔をしたあとにっこりと笑った。

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