私は玉座に座り、ひたすらに昨日のことを思い出す。
あの後佐々木くんが出ていって、私はしばらく無言になり、はっと思い出すように正気になった。呼び出したのはあのためじゃないのに…。言ってしまった。相手の心を傷つけてしまった。
私は背後に広がる家族の絵を眺める。
そこには私の父が堂々といる。その姿が目に映る度に怒りを少し感じる。昔されてきたことを思い出す。
「はぁ。」とため息をつき前を向く。今日は珍しく誰も私に提案や商談をしに来ない。いつもだったら誰かしら来るのに…
目の前には長い赤い布が私を指し示すようにこちらに向かって伸びている。隣には使用人が立っている。なんなら、もう暇なのであの人の様子でも見に行くとしよう。
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いつもの練習場にはいつも通りに練習試合をしている佐々木がいなかった。一人でぽつんと剣を振るい続けている。なんだか近寄りがたい。
視線を外すと練習場の端に女王様が来ていた。
佐々木の方を向くと女王様とバッチリ目が合っていた。
俺はその状況に不安を抱いた。
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私が練習場に着くと少し周りがざわついた。そして佐々木君を見ると真面目な顔して剣を振るっていた。ピタリと視線があい、お互いが見つめ合う。相手は「何しに来たんだ?」と思っているのか、いつものわかりやすい表情じゃないのでわからない。
佐々木君がこっちに寄ってくる。
目の前に来る。
そして、言葉を発する。
口が籠もる。いきなりのことにびっくりしてしまった。
「謝る時は相手を見て謝りなさい。」親からいつも言われたことだ。完璧じゃなければならない家庭にいた私は謝ることが多かった。その度私は下を向いて謝罪をする。今日もそうだ。相手の顔が見れない。
意外な答えが返ってきてびっくりした。驚いた。
そして、私の耳元で囁くように
私は驚きを隠せなかった。いきなり耳元で囁かれたのもあるが、たった1週間でなるというものだから目が点になった。
しばらく黙ったあと「なるほどね。」と言い、私も佐々木に囁いた。
佐々木は驚いた顔をしたあとにっこりと笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。