第11話

塵とは経験なり。
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2021/08/04 10:33
積もった塵は形を変えようと触れると塵は崩れ落ちる
なのに私は何故……
”変わろうとしたのだ?”
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家のドアを開け、指先から寒色に染まった。
金澤 結
ただいま
声すら震えていたのかもしれない。
ガチャ
金澤 華
おかえり
金澤 結
ただいま
金澤 五十人
……テストを出せ。
金澤 結
っ、あ、あの。
金澤 五十人
?どうした?
 サッ
金澤 結
お許しください!
カバンから高速に小テストを取りだし、土下座しながら渡した。
金澤 五十人
……
ペラ
金澤 五十人
これは……どうしたのだ?
金澤 結
わ、分かりません。何故か失点をしてしまいまして…
溢れる涙はこの部屋の寒色をぼやかしより深く染み渡った。
金澤 五十人
…とりあえずこの小テストを復習しなさい。
金澤 結
!?
怒らないの?!
金澤 五十人
わかったか?
金澤 結
は、はい!
金澤 五十人
あと、今度の祭りは行くな。
金澤 結
!?
金澤 結
な、何故!?
金澤 五十人
完璧ではなかったからだ。
金澤 五十人
この家系は全ての代が完璧ではなくてならなかった。
金澤 五十人
結、この家系に生まれたなら最初から運命は決まってるんだよ
金澤 華
……
金澤 五十人
「完璧でなければならない。」
金澤 結
……
バッ
金澤 五十人
この時何かが、体の中の何かが爆発して黄色に染まっていった。
金澤 結
知らないよ!家系?関係ないじゃん!
金澤 華
結、落ち着いて
金澤 結
落ち着いてなんてられる?ずっと小さい頃から頑張ってきたのに、こんな理由でこんなふうに育てられたの?
バン!
金澤 華
ビクッ
金澤 結
私だって”普通に育ちたかった!”家に閉じこもって勉強ばかり。周りは遊ぶ約束を交わしていて、楽しそうだった。
金澤 結
けど、人には関わってはいけないってお父さんが言ってたから!守ったんだよ?約束を!
金澤 結
私は今やっと知った!それは私のためじゃない!その約束は!この家系を守るためだったんだ!もう私には友達が必要なんだ!
金澤 五十人
……
金澤 結
大切なのは”自分の意思”だ!
吐き出しきった黄色は床の寒色と混ざっていた。
この時はっとした。
飛び散った黄色は父と母の服を汚していた。
金澤 結
ご、ごめんなさい。
金澤 五十人
……いいんだよ。何も悪いことはしてない。
金澤 五十人
ごめんな?こんな親で
金澤 結
い、いや……
金澤 五十人
だが、祭りはダメだ。
金澤 結
……
金澤 五十人
いいな?
金澤 結
はい…
自分の中の塵が崩れる音がした。
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それからは普通に過ごした。
祭りのことを言おうとしたが周りを呆れさせてしまうと思うと言えなかった。
だって、浴衣を借りたのに…
宇和崎 咲
どうしたの?
金澤 結
あ、いや!何も
宇和崎 咲
そっか。
佐藤 光
とうとう明日ね!
唐澤 梅
楽しみね〜
今崎 聡
佐々木の告白もな!
佐々木賢人
ちげーつってんだろ?!
今崎 聡
WWWWW
金澤 結
……
佐々木賢人
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佐々木賢人
どうしたんだろ?金澤さん……
俺は自分の部屋に座っていた。
ふと目の前の鏡を見ると自分の仮面が、右目の部分だけ残っていた。
佐々木賢人
明日だよな。
何故か怖くなって、この部屋がもっと狭く感じた。
ちっさくなった時計を見ると9時だった。
佐々木賢人
早く起きて準備しないとだからな。もう寝るか。
布団にこもるとふっと意識が夢に落ちた。

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