テヒョンはジッと私を見る。
私は意を決して全てを話した。
このことに対しての後悔で逃げたくなる。
必死に我慢する。
涙が止まらない。
無理だ。こんな顔見られたくない。
私は顔を伏せる。
私はテヒョンを置いて走った。
後ろから追ってくる足音。
テヒョンは私のうでをつかみ、壁に押さえつける。
逃げようともがくが、びくともしない。
テヒョンは頭をかきむしる。
私は逃げようとするのをやめた。
テヒョンは嘘でこんなこと言わない。
ホントに私を好きでいてくれた。
なぐさめなんてものじゃなかった。
記憶を失ったテヒョンが一番辛いことを
私は気づいてあげられなかった。
もう私が逃げないとわかったのか、
テヒョンは手を離そうとした。
私はその手を引き寄せて、テヒョンを抱きしめる。
テヒョンはにっこり笑顔だ。
いつか同じようなこと、言ったような……
テヒョンは私に向かって手を伸ばしている。
もう絶対失わない。
あなたを失うわけにはいかないんだ。
もう離さないように、離れないように、
私はその手を強く握った。
end
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!