私の平凡で平穏な日常は
謎の少年、青木圭介が現れた事によって
もろくも崩れ去ってしまった───────
───────うるさい、
さっさと消えて。
ジロリと睨めば
ニヤリと笑い返してくる
か、顔が近いよ青木圭介っ!
グイグイ顔を近づけてくる青木圭介を
何とか押し退けようとする私
けれど彼、顔には似合わず
なかなか力が強い
私の抵抗も虚しく
あっさり手首を捕まれちゃって
後ろの壁に押し付けられてしまった
ジッと間近で顔を見つめられると
身体中の血が一瞬にして
頭に登って来たみたいにクラクラした
彼の顔なんて見てられなくて
プイッと横を向いてギュッとキツく目を閉じる
私の心臓は今にも皮ふを突き破って
そのまま出て来そうなくらい
バクバクと騒いでいる
耳のすぐ近くで彼の笑う声がした
私の手首をそっと離すと
少し離れて座り直した青木圭介
うっすら目を開けて彼の方を
恐る恐る見てみると
笑っているような
泣いているような
よく分からない表情をした青木圭介がいた
関わらない方がいい───────
そう言おうとした私の声を遮るように
青木圭介が口を開いた
にっこり微笑む青木圭介
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!