第2話

彼の秘密
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2018/09/20 13:48
次の日、まりには
本当にごめんね、と謝られたけど、
私としてはいい暇つぶしにもなるし、
古典が苦手というだけで、今年から理系コースに進んだ私にとっては、

早く仕事を終わらせて、二宮先生にわからないところを聞こう!


なんて、ポジティブな考えに昨日の帰り道には辿り着いていて、
今日の昼休みに化学準備室に向かう足取りは、昨日に比べたらとても軽くなっていた。


そんなのもつかの間。
ドアの鈍い音を鳴らそうとした瞬間に開いたドアから、珍しく2日連続で見るその顔。
二宮先生はクリームパンみたいなこぶしから、
チャリチャリっと小銭を私に握らせると、
二宮和也
焼きそばパンとコーヒー牛乳
とだけ言って、ドアを閉められてしまった。


完全にパシリだよ!というかもう手下?
購買のパン買うのどれだけ大変かわかってる?
なんて頭の中でイライラを爆発させながら購買に向かって走る。

幸い小柄な方なので、隙間をするする抜けて無事に焼きそばパンまでたどり着く。
化学準備室への帰りに自販機で紙パックのコーヒー牛乳を買うと、渡された小銭は綺麗に全部なくなった。
二宮和也
あの時間に行ってよく買えたね
と少し驚いたような、でも買ってこれなかったら決して許されないような顔をして、
焼きそばパンにかぶりつき、またゲームを始める。
自分
お昼ここで食べていいですか?
本当はいつも友達と教室で、机をくっつけてお弁当を食べている。
でも、お昼休みにここに来るためにそれを断ってきた手前、食べる場所がない。

二宮先生は
好きにしな、
とだけ言ってゲームをする手を止めない
自分
それ…生徒から没収したやつですか?…
と聞いたのに、返事はなくて、1人で小さく、
いただきます。と呟いてごく飯を食べる。

プリントの片付けが終わっていないので、
急いでご飯を食べ終えて、また作業に戻ろうとしていたとき、
カラカラとガラス戸の音を立てて二宮先生がベランダに出る
二宮和也
これ、秘密ね
と口元に人差し指を立てて、
しゃがんだまま煙草をくわえて見せる
二宮和也
喫煙所遠いのよ。生徒が来られないように

という言い訳が聞こえないくらい、
二宮先生の"秘密ね"という優しい声と、
人差し指を立てる仕草は、



私の鼓動をうるさくさせた

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