第34話

31話‹会える距離会えない時間›
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2018/12/02 13:51

初秋、という言葉が使われるようになる頃、
この学校では毎年文化祭が開催される。



ブラック校則ではあるけど、
相葉先生のバスケ部を代表に、
いくつかの運動部がかなり上の大会まで進む
強豪校で、櫻井先生率いる吹奏楽部が
なんといっても全国出場クラスのレベルだから、毎年文化祭も入学希望者もどんどん増えている。



クラスでは2年生から
飲食の出し物も可能となり、より一層楽しみだ。



風紀委員としては、
文化祭委員と毎日放課後残って、
校内の装飾や毎年開催されるポイ捨てをなくす為の、ごみ箱デザインコンテスト、
なんていうのを運営して、
当日までにそのデザインのごみ箱を作らなければならないかなりの仕事量。




「私たちのクラスは、カフェをやろうと思うんだけど、なにかテーマを持ちたくて!何がいいと思いますか?」


文化祭委員のまりが前に立って、
次々に決めて行く。


メイドカフェや、コスプレカフェ、
アニマルカフェとか、駄菓子カフェとか
本当にいろんな案が出た。


申し訳ないけど、私は委員の仕事が忙しくて
ほとんど話し合いも聞いていなかったし、
放課後二宮先生のところに行くこともできず、
そんな忙しさを数日続けていたら、


行かないことが普通になってしまっていた。





授業で顔を合わせるたびに、
そういえば行ってないな、と思い出し、
お昼ちゃんと食べてるかな、とか、
部屋は散らかっていないかな、なんて
心配はするけど、

部屋に行く用もなければ、
暇もなくてまともな会話をせずに

2週間以上が経っていた。




文化祭まで10日程度と迫る頃、
カフェの衣装が完成した。


結局王道のメイドカフェをやるそうで、
事前準備は爆発的に忙しい私も、
当日になればやることは片付けの時間まで
ほとんどないし、
きちんとシフト表に名前は書かれていて、
ちゃんと衣装も用意されている。



試着をすると、ふわっふわのレースで
本当に可愛いメイド服。

私なんかには
ちょっと恥ずかしいくらい可愛い。



ブラック校則の学校だけど、文化祭の最中は、
演劇やダンスの出し物なんかもあるため、
常識の範囲内のメイクはできる、
それも後夜祭までに落とすのが条件だけど、
メイド服に浮かない程度のメイクはしなくちゃな〜〜
なんて。

どんどん楽しみが膨らんで行く。


まりと隠れて禁止のスマホを取り出し、自撮り。


高校生!って感じがして、
青春!って感じがして、


二宮先生を、深く知る前の
自分に戻った気がしていた。


普通の高校生って、
こういう風に楽しんでたんだって、

思い出した。



それでも、もう二宮先生なしの高校生活は
想像もできなくて、

それほど大きい存在なのを思い知らされる。



「小田っちのシフト、その姿を二宮に見てもらえるように、呼び込み多めで作ったから」


こそっと、まりに耳打ちされる。


「職権濫用じゃん」


なんて。
満更でもないって顔してるんだろうな、
と思いながら笑い合う。


二宮先生、一瞬でも可愛いって
思ってくれますか?



いや、
私と文化祭の最中に会えますか?

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