第25話

23話‹勘違い…か…›
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2018/10/22 13:51
前回出したやつの通りに、
吹き出しは使いません。

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「じゃあ、最後。まとめテストやってみ」



夏期講習の最終日は、
ついに来てしまった。


あれから、辛くても
二宮先生のことを好きだって、
自分が思っている限りは
その気持ちを封じ込めるのを辞めた。


報われる恋が全てじゃない。


むしろ報われない方が多いし、
きっとそれが私を成長させる。


「このまとめテストで、満点取れたら夏休み明けのテストも満点取れるように作ったから」



「じゃあ、これで満点取れたら、まずひとつ何かご褒美ください」


「つべこべ言ってないで、やんなさい」


ピッ
と時間を図り始めるタイマーの音が聞こえて、
私は問題とにらめっこする。


自分でもわかる。

二宮先生に教えてもらって、
化学ができるようになってる。



ピピッと、終了時刻を告げる音が鳴る。



「はい、じゃあ採点」


目の前で赤いペンが、キュッと丸をつける。


合ってる。



そこも合ってる…。




チラ
と私を二宮先生が上目遣いで見る。



「休憩、しなよ。疲れたでしょ」



その言葉に甘えて、財布を持って部屋を出て、
いつもの自販機でコーヒー牛乳を買って帰る。

もちろん、二宮先生の分も。
「あの、これどうぞ」
「あんがと」



焼きそばパンは、
購買が夏休みでやってなくて買えなかった。




はい、と目の前に
採点を終えたまとめテストが返される。


97点……



「1つだけ、ここね。これは、ここに惑わされないで、使う数値はこっちだから…」



1つだけ…
でも、そこまで成長した…
悔しいけど嬉しい。



蝉の声が響く部屋で、
2人で静かにコーヒー牛乳を飲む。



そんなロマンチックとも言えないけど、
かけがえのない時間を過ごしていたのに。




"ぎゅるるる〜〜"
と、私の盛大なお腹の音。



恥ずかしい……


「ふふふっ…腹…減ったね?」



頷いた私に、
なんも食うもんないんだけどさぁ…
と言って、
コーヒー牛乳の空いたパックをゴミ箱に捨てる。




「俺、この後、そこの花火大会の見回りしなきゃなんないのよ。うちの生徒が悪さしてないか。夕方から行けばいいんだけど、もう屋台出てるし、一緒に行く?」



そんな…



こんな嬉しいことある?



でも…


「他の生徒に見られたら、まずくないですか?」


「そんなん、二宮先生にパシられました〜〜って言っときゃいいのよ。腹減ったんでしょう?」


どうしよう。



嬉しい。



「あの、それ、って、勘違いしちゃいますよ……?」



「んー……?」




「ご褒美だって、思っちゃいます。こんなん…………デート………みたいで…」



思わず声が小さくなる。


こんなこと言って、
二宮先生を困らせるだけなのに。























「いいんじゃないの、勘違いしとけば。」






そういう二宮先生は、
支度まだできないんですか?
という顔で、こちらを見る。



いつのまにかいつもの白衣は脱いでいて、
黒いポロシャツに、カジュアルなチノパンで、
今日はスニーカーを履いていた。



鞄を持った私は、行けます!
と、言うと、
またふふふっ、と笑って



「じゃ、行こっか」



なんて。


勘違いします。
勘違いしてます。



二宮先生と、花火大会デート。



ガチャ、
と化学準備室の鍵を閉める音がすると、
胸の鼓動が加速する。




悪いことをしているみたい。



半歩前にポケットに手を突っ込んだ、
いつもと違うカジュアルな二宮先生がいる。

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