後半の夏期講習は、
なんの迷いもなく科学準備室に向かったのだけど、
鍵のかかっているその扉。
その前に立って、二宮先生が来るのを待つ。
お盆休みの間に田舎で焼けた腕を見て、
二宮先生の肌の白さを思い出す。
やっぱり女の子は白いほうがいいかな…
なんて落ち込みそうになる。
スッと携帯を取り出し、時間を確認する。
普段の学校では、携帯は禁止。
元々は持って来るのも禁止だったんだけど、
いつ自然災害が起こるかわからないから、
電源を切ってなら持って来てもいいという校則。
だけど私はいつもただのマナーモードで。
時計で日焼けしたくなくて、
夏の時計はもっぱら携帯。
10分すぎてる…
と思ったところに、コツコツという
革靴の音と、ザッザッという
足を引きずるような音が混ざるのは、
二宮先生の足音。
来た…!
右手に持った携帯を
カバンの中にしまおうと思ったけど、
焦ってその手を滑らせる。
カシャン……!
あっ!
その携帯に手を伸ばした時、
目の前で携帯を持ち上げる手が見えた。
スルスルと手の中で何度か回転させて、
白衣の胸ポケットにしまう
二宮先生はニヤリとして、
化学準備室の鍵を開け、私を中に入れた
二宮先生は私に指図する。
ピピッ、とエアコンを起動する音を鳴らす
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。