第32話

第29章
389
2020/12/28 15:44
ーーーーー side Natsuki.H



あの日に見た光景が、頭から離れない


夏輝君がいつも見ている黎弥君の天使としての仕事を見たくて自分から言って見させてもらっていた

空中で浮いている光を優しく包むように浄化させていく黎弥君の姿はとても綺麗で
それを終えたのがわかって黎弥君に駆け寄って声をかけたときに見えた、黎弥君の左側の羽根の端

薄らと透明になりかけているのが目に入る

それがなんだか、嫌な予感しか無くて思わず黎弥君に抱き付いた
黎弥君は俺の気持ちを知ったのか背中を撫でてくれた
けど、まだ話せないのか『話せる時期』が来たら話すって言っていた

それでも、あの光景が頭から離れなくて
黎弥君が消えちゃうんじゃないかって今でも思ってる



堀夏
堀夏
・・・・・



それをずっと考えていたら、ふと俺はある人を思い出してスマホを手に電話を掛けていた

オフだから家にいても不安感に襲われてしまうから、その人の電話番号をかけて耳に当てると繋がる音が聞こえた



???
はい。
堀夏
堀夏
あ、堀夏喜です。
???
なっちゃん?どうしたの?
堀夏
堀夏
はい・・・あの、今、大丈夫ですか?
玲於さん・・・。



そう、玲於さん

GENERATIONSさんであって憧れの人で
黎弥君と同じ天使で【羽根無き者】である龍友さんの支えになってあげている人

その人なら、いや、玲於さんに聞いてほしかった



玲於
玲於
何かあったか?
堀夏
堀夏
・・・はい。
玲於
玲於
黎弥か?
堀夏
堀夏
・・・!
はい、その・・・。
玲於
玲於
ゆっくりで良いよ。
堀夏
堀夏
・・・はい・・・



玲於さんの言葉に落ち着きを取り戻しながら俺は話した

黎弥君の羽根の端に見えたあの光景のことを

混乱しそうになりながらも全て話した



玲於
玲於
そっか、黎弥の羽根が・・・
堀夏
堀夏
・・・俺、どうしたらいいかわからなくて・・・怖くて・・・
玲於
玲於
・・・なっちゃん。
堀夏
堀夏
黎弥君までいなくなったら、俺は・・・僕達は・・・



そう、黎弥君までいなくなったら
FANTASTICSはバラバラになってしまうかもしれない

それが怖いんだ

翔太君のことがあって、何も失いたくないと8人で決めたのに



玲於
玲於
・・・前に、龍友君が言ってたんだ。



不意に玲於さんの声が少し優しくなった



玲於
玲於
天使は完全に消えるわけではない。
最も大きな事故が起きない限り
それが起きた場合は自らの命まで
使って治癒の力を増幅させ解放する
それをすると、天使は力尽きて
姿ごと消えてしまうんだって
堀夏
堀夏
・・・え・・・?
玲於
玲於
俺達に出会うまで、何人もの天使達が
そうなっていくのを見てるんだって
だから、龍友君が【羽根無き者】
としていられるのは奇跡なんだって
堀夏
堀夏
奇跡・・・
玲於
玲於
そう、だから、黎弥を信じてやって
そしたらなっちゃんが見たそれは
いつか奇跡に変わるかもしれないから



玲於さんの言葉に俺の中の不安が消えていく
そして、皆と誓ったあの日を思い出す

そうだよ
信じなくてどうするんだよ
皆で黎弥君を守るって決めたんだ
悪魔もいる事を知っても
絶対に守るって誓ったんだ

そう思い出したら、全部吹っ切れた自分がいた



堀夏
堀夏
玲於さん、ありがとうございます。
玲於
玲於
吹っ切れた?
堀夏
堀夏
はい。
黎弥君を信じて、守り抜きます!
玲於
玲於
良い心構えだぜ、なっちゃん!



玲於さんの言葉に感謝しながら一言伝えてから電話を切る
そして、写真立てを目にして写真の中に写る翔太君を見つめる


翔太君、力を貸して
黎弥君を守り抜く為に

悪魔なんかに負けないくらい、強くなるから

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