ーーーーー side taiki
・・・とはいうものの、目の前にすると言えなくなるのはこの事かと思っている自分がいる
この日は世界さんからの振り落としとグループでの話し合いがある
黎弥にも会えるから聞ける!
と思っていた数十時間前の自分を殴りたい
世界さんからの振り落としを何度も確認しながら合わしていく
だけど、時々、終えて移動準備に入ると黎弥の方を見ている
そう思いつつ鞄の中に入ってある、あのネックレスを見る
赤色の星形のネックレス
なぜ、あの羽根がこの形に姿を変えたのか
やっぱり聞いた方がいいよな、と思いながら話し合いをする場所へ全員で動いた時だった
急に聞こえた慧人の声で顔を上げた瞬間
目に入ったのは、階段の下へと落ちていく、なっちゃんの姿
すぐ近くにいた勇征と颯太が手を伸ばしたけど、なっちゃんと同じ身長の筈の勇征の指が、なっちゃんの指を掠めた
だめだ、間に合わない
そう思ったのと同時に、誰かが猛スピードで通り過ぎていく
そして、バサリと音が辺りに響いた
その時に、間に合わないと思っていたからか、俺だけ目を閉じていたようで目を開く
そっと顔を上げながら聞こえたなっちゃんの声で目にしたのは
なっちゃんの手を掴んで阻止した、黎弥の姿
いや、それだけではない
黎弥の背中から見えたものに目を見開いた
真っ白な羽根が、黎弥の背中から姿を現していた
そして、それを出したまま黎弥はなっちゃんの手を引くと安定した位置へと座らせた
なっちゃんが指差したその羽根に黎弥は少しだけ見ると、ある一点を見た
その視線を辿ると、其処にいたのは澤夏で、更に驚くことに、澤夏は驚く気配無く黙って黎弥を見ていた
その姿を見て、俺はある一つの合点を見付けた
たった一言伝えた言葉に、澤夏の首が縦に動いた
澤夏の言葉に黎弥が頷くと羽根が静かに消えて、俺達を見ると、話し合いの場所へ行きましょう、と澤夏が言う
その言葉に俺達は頷いて前を歩き出した澤夏と黎弥の後を追った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!