第9話

第7章
463
2020/11/24 14:08
ーーーーー side Natsuki.H


振り落としを終えてから話し合いをするために向かっていた最中、慧人の横にいた俺は足を踏み出して階段の下へ身体が落ちていく
勇征が急いで伸ばしてきた手を掴もうとしたけど、既に指が掠める距離になっていて

ヤバイ、と思った瞬間、誰かが飛び出して来て俺の手を掴んだ

俺の手を掴んで阻止してくれた方を見ると、其処にいたのは黎弥君だった、黎弥君だったんだけど



堀夏
堀夏
黎弥、君・・・?



俺の目に入っている黎弥君の後ろの方へ目が向く

真っ白な羽根が、黎弥の背中にあったから


どういうこと?
なんで黎弥君の背中に羽根が?


そんなこと思いながらも黎弥君は俺を階段から離すように手を引いて皆がいる場所へ戻して座らせてくれた

そのあとに黎弥君から大丈夫?と聞かれて答えたけど、背中にある羽根が気になって聞いてみたけど、黎弥君は表情が一瞬だけ曇った気がした


それを澤夏君の方へ視線を向けていて、目を向けてから大樹君の言葉と澤夏君の動きを見ていた

澤夏君は知っていたのか、黎弥君に言葉をかけてから歩き出して俺達も後を追った


話し合いをする場所としていた会議室に皆で入ると、黎弥君はまだ表情を曇らせていて澤夏君は黎弥君を椅子に座らせた




黎弥
黎弥
・・・ごめんなさい、黙ってて・・・



椅子に座って落ち着いたのか、黎弥君が一言そう言ってきた



世界
世界
教えてくれる?さっきの・・・
慧人
慧人
さっきの、あれは・・・羽根でしたよね・・・?
黎弥
黎弥
・・・・・



世界さんと慧人の言葉に黎弥君が首を縦に動かした
澤夏君は黎弥君の隣で様子を見ている

黎弥君は、言葉を探しているのか口を開けては閉じての繰り返しで、少し様子を見ていると、決意したように顔を上げた



黎弥
黎弥
さっきの羽根は、本物です。
俺・・・人間ではなく、天使なんです。



その言葉に、驚きを隠せない
それは俺だけではなく、黎弥君と澤夏君以外の皆も同じだった



黎弥
黎弥
元々、天使は子供の時から色々学ぶんです。人間の事や天使としての宿命、頭の中がパンクになりそうなくらい。
そして、学び終えると人間が住むこの世界に降り立って人間として過ごし、この世界にあるマイナス、いわゆる地球が産み出しているマイナスを吸収して治癒しているんです。
そして・・・ある年を迎えると宿命を終えたこととして天使が住む世界、天界に戻るんです。
颯太
颯太
・・・あの、その年って、いつなんですか?



黎弥君から聞いた話に驚いていると、不意に颯太が黎弥君にそう聞いた

天使としている理由はわかるけれど、確かに、ある年とは何時なんだろうと思っていたら



黎弥
黎弥
もう過ぎてるよ。



ストン、と黎弥君がそう答えた



颯太
颯太
え?
黎弥
黎弥
その年は、良い区切りとなる“成人”、つまり、二十歳の時に戻るんだ。
勇征
勇征
はた、ち・・・?



二十歳

確かに子供が大人へと足を踏み入れる年だ
けれど、今の黎弥君は既に成人を迎えていて、成人して数年は経っている、何度もお祝いしていたから



黎弥
黎弥
戻るのをやめたんだ、自分の意思で。
堀夏
堀夏
黎弥君の意思?
黎弥
黎弥
世界さん、大樹君、夏輝君、夏喜
慧人、勇征、颯太、翔太
皆に出会って
FANTASTICSに出会って
たくさんの先輩や後輩に出会ったから
皆の傍にいたいし離れたくない
だから、戻るのをやめた
皆を守るって翔太と約束したから。



黎弥君が戻らなかったのは俺達に出会ったから
それも、翔太君と約束をしていた

俺達を選んでここにいてくれたんだと分かると嬉しくなっている自分がいて、俺は黎弥君に思いっきり抱き付いた



黎弥
黎弥
夏喜?
堀夏
堀夏
ありがとう、黎弥君。
俺、俺っ・・・



嬉しくて、涙が溢れそうになったのを抑えてギュッと抱き付いていると、黎弥君の手が背中を擦ってきたのが感触で分かった


凄く落ち着くし、安心する

その感触に泣きそうになるのを抑えながら顔を黎弥君の肩に埋めるように隠した

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