第10話

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2021/01/23 15:28

治「なんや、ツム。いつもより遅かったな」


俺より先に校庭に戻ってきとったサムに声を掛けられる。角名も一緒におる



侑「…別に、授業なんかこんなもんで十分やろ。ちょっと水飲んでくる」


2人に言い放ち、校庭のベンチに置いてあったタオルを掴むと水飲み場へ向かう








?「今日はタオル持って来たの?」


校庭に一番近い水道で水を飲み、顔を洗っていると、聞き覚えのある声が頭上から降って来た


顔を上げる





侑「……おん。今日はな…」


ニコッと笑い、ソイツも顔を洗い始めた



その頭上から今度は俺が話しかける





侑「自分、速いんやな」


「ん、何?」とソイツが顔を上げた。前髪が濡れて額に貼り付いている





__________________、!//


水滴が滴る綺麗なその横顔にドキッとする



侑「間宮さん…やったっけ?自分、走るの好きなん?速かったやん」



平静を装って話しかける





あなた「あ、うん。走るの…っていうか、体動かす事は結構好きだよ」


侑「へぇ〜…。そうなん」


あなた「朝早く目が覚めた時は、たまに走ったりするしね」


人懐っこい笑顔でニコッと笑う



侑「__________________っ、//
…せ、せやけど。体育の授業で自分見たの今日が初めてやわ。なんや噂通りなん?指先使わんから、マラソンはええんか?」


あなた「あ、そっか…"噂"…ね。知ってるんだ……でも、そんな特別扱い最低だよね」





さっきの笑顔が一瞬で消えて、間宮さんは悲しそうな顔をして俯いてしまった



予想外の反応に焦る



侑「な、なんや!ピアノの為やろ?!自分"天才ピアニスト"なんやろ?!
天才だって才能だけや無しに、数え切れん程の努力や犠牲が必要やろ?それでも、ピアノが好きなんやろ?」


あなた「へっ?あ、…うん。そうだね!(笑)」



間宮さんは一瞬目を丸くして、驚いた表情をした後「そうだね」と、もう一度ニコッと笑った





その笑顔に


なんや、胸のドキドキが落ち着かん……





侑「あ、…そや!間宮さんのピアノ聴いたわ。スマホの動画やねんけど。やっぱり上手いなぁ」


もう少し話がしたくて、何とか話題を絞り出す



あなた「音楽、興味あるの?」


侑「…いや、難しい事は分からん。せやけど、ピアノ弾いとる間宮さん、楽しそうやったで」


そう言うと間宮さんは「ありがとう」と今度は小さな声で呟いた








俺達が戻ってきてから、どれくらい時間が過ぎたんやろ…

校庭には半分以上の生徒が戻ってきとる






校庭の様子を気にしながら間宮さんは

あなた「あ、私そろそろ戻るね。じゃあね」


そう言って俺に向かって片手をヒラヒラさせて立ち去ろうとする





侑「あ、…おん。あ!なぁ、また話しかけてもええ?」



自分でも驚いた。校庭に戻りかけた間宮さんの後ろ姿に咄嗟に声をかけてしまった


侑「……あ、あれや!俺、クラス違うしな。せやから、迷惑…でなければ」





間宮さんは「そんなの、良いに決まってるよ。じゃあね」と言って校庭に戻って行った















あなた side





自分だけ体育の授業を見学したり、保健室で補習して過ごすのは____________特別扱い ・ ・ ・ ・そう言われて快く思われていない事は知っている…





それが"やむを得ない犠牲"という事も分かっている

でも、本当は皆と一緒に運動したい!
そんな特別扱いなんて望んでいない!!





__________________でも、ピアノのため……





また怪我をしてしまったら…またピアノが弾けなくなってしまったら……



お母さんが悲しむから





ずっと誰にも本音を言えなかった
誰にも分かってもらえないと思っていた…





あんな風に言ってくれる人がいるなんて…

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