ある日の昼休み______
クラス替えの日に仲良くなった翠、去年翠と同じクラスだった恩田美香、私の隣の席の新山菜乃花。と私を含む4人でお弁当を食べる
翠「ねえねえあなたってさ、ピアノ凄いんやろ?天才ピアニストって言われとるやんか」
卵焼きを加えながら翠が喋り出す
あなた「だから……天才は大袈裟だよ(笑)
賞を取れたのは、たまたま調子が良かったから。ま、ピアノは物心ついた時からやってたから、それなりには弾けるけどね」
美香「レッスンっていうの?そういうの厳しいん?」
美香は料理が好きらしく、毎日自分でお弁当を作って来る。今日のお弁当はご飯がオムライスになっていて可愛い
あなた「ん〜…それも子供の頃から当たり前だったから……どうだろう?
でもピアノの為に制限があったのは、ちょっと辛かったかな」
菜乃花「制限?」
菜乃花はお弁当の最後には必ず苺ミルクを欠かさない。今日ももちろんお弁当箱の横に置いてある
あなた「うん。怪我したらピアノが弾けなくなるから、スポーツ…特にバスケとかバレーとか禁止されてる。でも本当はやってみたかったな〜って…なんてね」
そんな事、とっくに諦めた事だ
アハハ……と笑いながらお茶を一口飲む。ひと呼吸してから「なんてね」と付け足す
翠「じゃあ、観るのは?観るだけじゃ物足りんかもしれんけど……でも、観るだけでも楽しいやんか!しかも、生で観たら迫力あるで!!」
あなた「え〜…まぁ、スポーツ観るの好きだけど、そんなに簡単に何処で観るの?」
翠「え〜っとね……。あ、おったおった!角名!!」
名前を呼ばれて角名くんは明らかに嫌そうな顔で私達に近づいて来る
角名「あ〜…何?冴島」
翠「あからさまにそんな嫌そうな顔せんでも……ま、ええわ。ねぇ、角名ってバレー部やん。見学したいんやけど。バレー!」
角名「はぁ?!何?いきなり。って言うか……冴島ってバレーに興味あったの?」
翠「あるよ!興味アリアリや!でも、私よりあなたがね!あなたがバレー観たいんよ!」
私の背中を叩きながら角名くんに目を向ける
角名「へぇ〜…間宮さん、バレーに興味あるんだ?」
あなた「あ、うん。バレー観るの好きだよ!でも……突然行って見学なんて出来るの?」
角名「まぁ、毎日双子目的にギャラリーは煩いから、そこに見学者が1人や2人増えたところで別に良いんじゃない?
あ、どうせなら今週末、練習試合だから……練習試合で良ければ見に来たら?
土曜日、午後1時から。いつもの体育館だから」
そう言って角名くんは友達の所へ戻って行った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!