ザワザワ……
翠「何や、人混みが凄すぎて掲示板見えへん」
私の隣で翠がピョンピョン飛び跳ねている
校内模試の結果を見ようと掲示板前にやって来たものの、人混みが凄くて全く見えない
角名「掲示板をもっと高くしてくれたらいいのに。ってか飛び跳ねたところで、冴島の身長ではそもそも無理があるでしょ」
翠「うっさいな。角名のくせに」
角名「「くせに」って何なの?」
言い合う2人を無視して私も背伸びをしてみるが、意味無し……
侑「ほな……」
周りの人混みをグルリと見渡し、グイっと私の手を掴むと侑くんは「ちょっとごめんな〜」と言いながら、その人混みの中へと入って行く
あなた「あ、えっ?ちょっ…、えっ?!」
私は引っ張られるままに侑くんの後ろにくっ付いて人混みの中へと入って行く
治「あっ、ちょっ……ツム!!!」
私達の背後を治くんが付いてくる
翠「あ、ちょっとごめんな〜」
さらにその後ろを翠と倫くんが付いてきた
「えっ?ちょっと何?」
「やだ、押さないでよ!」
「あ、侑くん!!」
「治くんも!!」
人混みを掻き分けて進むのが宮兄弟だと分かると、自然と道が開けていく
……流石だなぁ
っと……感心している場合じゃなかった
目の前の掲示板から、まずは双子の名前を探す
あなた「……あ、侑くんと治くんの名前見付k____________。」
侑「……お!あなた1番やんか!!!」
____________えっ……、?!
掲示板の左上を指さす侑くん。そんな横顔を見つめ、そのまま侑くんの指差す方へと視線を辿る
1番 1組 間宮 あなた
……え"えぇぇぇ〜〜っ!!!!
まぁ、確かに手応えはあったけど……まさか、
掲示板の自分の名前をぼんやり眺める
____________、って、そんな事してる場合じゃなかった!
双子の名前____________、!!
両隣にいる双子の腕を掴み、その顔を交互に見上げる
……?
2人とも掲示板を見つめたまま表情を固くしている
あなた「侑くん、治くん……」
名前を呼び、掴んでいるその腕を揺する
治「……あ、…お、おぅ」
侑「あなた……」
腕を揺すられて、ロボットのようにぎこちなく首から上を私に向ける
同時に私を見下ろすその顔は狐につままれたようにポカンと口が半開きになっている
あなた「2人とも見た?!自分の名前」
治、侑「「お、おん……」 」
もう一度掲示板を見て、2人は自分の名前を確認する
治「あなた、あそこ……。あったな、俺の名前」
あなた「うん、あったね!凄いね。2人とも100番台に入ってるよ!!これで、合宿も大丈夫だね!」
侑「おん。せやな!合宿は大丈夫や!!」
そう言いながら両サイドから腕を掴まれる
侑「いや、それより……俺が100番台って……毎回テストは赤点ギリギリやのに……ほんまあなたのお陰や!」
侑くんは私の頬を両手で包み、上を向かせて自分と視線を合わせさせる
あなた「ひぇ。あひゅむひゅん。いひゃいひょ……」
余程嬉しいのか、そのまま頬をムニュムニュと弄られる。お陰で言葉が上手く喋れない
「ちょっ……何?あれ」
「侑くんと天才ピアニスト?」
「あれ見て。信じらんない!」
「最近あの子さ……知ってる?」
治「おいツム!!何してんねん?!」
目線だけ横に向けると、眉間に皺を寄せた治くんがいる
無理やり私の顔から侑くんの手を引き剥がす
角名「侑、止めてあげて。皆に注目されてる」
治くんの隣から倫くんの声も聞こえる
倫くん……?
何でだろう。倫くんの声がいつもより低い
翠「角名やって…、注目されとるわ」
翠の声に周りを見渡すと、痛い程の視線を感じる
____________あぁ…。ここ、掲示板の真ん前だった
あなた「と、取り敢えず…あっちに行こう」
小作「あ、結果見てきたん?」
双子の背中を押しながら人混みから抜け出すと、小作くんに声をかけられた
まだ何人かの女子は、私達をチラチラと見てくる
侑「何や、いちいちこっち見おって。喧し豚が。煩いわ!!」
何にイラついたのか、彼女達に鋭い視線を投げつける
あなた「侑くん……駄目だよ、そんな言い方…」
侑「やって……」
嗜めるように言葉をかけてから、小作くんへ向き合う
あなた「私達、掲示板見て来たから。小作くんも見て来なよ」
小作「せやな。行ってくるわ」
人混みへと入って行く小作くんの後ろ姿を皆で見送った
侑 side
侑治「今日のアレ、何なん?」
帰り道、角名達と別れるなりサムに腕を掴まれる
侑「あぁ?!アレって何がや?」
サムが何を言っているのかなんて、すぐに分かったけど、惚けてみせる
治「ったく。惚けんなや!今日のアレや!掲示板前の」
侑「んぁ…、あぁ、あれか。何やサム、焼きもちかいな?」
サムの顔を見て、口元を緩ませニヤリと笑う
サムは眉間に皺を寄せて、明らかにイライラしとる
治「チッ……そんなんちゃうわ」
おうおう……見栄張りおって
治「あんな、あなたやけど……。ツムが思ってる程、あなたは何とも思ってないわ」
自分の足元を見つめながらサムがボソッと呟いた
は?アホか、コイツ……。何言うとんねん
治「あなたなぁ、多分……、鈍感や」
侑「____________、ん?」
誰に言うともなく今度は空を見上げながら呟き、俺を置いてサムは歩き始めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!