侑、治「「……この通りや!頼む!!」」
あなた「えっ……いきなり何?」
登校して教室に入るなり、宮兄弟がやってきた。その後ろには角名くんもいる
治「もうすぐ校内模試あるやろ。あれで成績悪かったら補習になってもうて、GWの合宿に参加出来なくなんねん」
侑「せやから、この通りや!勉強教えてほしいねん!!」
そう言うと、双子は同時に顔の前で手を合わせ"お願いポーズ"をとる
あなた「(フフフ……2人同時って。流石、双子!)」
治「で、……どうなん?」
あなた「えっ!?あ、うん。リアクションが同時って、流石ふt____________」
侑「「うん」って……ほな、勉強教えてくれるん?!おおきに!!これで殺されずに済むわ〜」
侑くんは、ガッツポーズをしながら天を仰いでいる
あなた「へっ?!殺される…?」
一瞬"へっ?"と思ったが、……いやいや、そうじゃなくて!!
治くんも「ヨッシャ〜!」と言いながら、拳を突き上げている
あなた「あ、えっ?!ちょっと待って。「うん」って、そういう意味じゃなくt____________」
一旦会話を戻そうと思うが、双子は全く聞く耳を持たずにはしゃいでいる
侑「ほんま、おおきに!」
治「ありがとうな、間宮さん」
双子から揃って満面な笑顔を向けられてしまった
……もうこれはどうにも出来ない
あなた「あ、え〜っと……うん。(まぁ、模試までの間なら……)」
返事をしながら、この前の練習試合の様子が脳裏に蘇った
____________楽しそうにプレーする部員達の姿
あんな姿を見たら、合宿には何が何でも参加して欲しいと思う
その為に私に何か協力出来るのなら……
よしっ、こうなったらやるしかない!!
観念し、自分自身にも言い聞かせながら双子に笑い返す
あなた「よし、頑張ろうね!!それで、何の教科を教えてほしいの?」
治「俺は、数学と英語……あとは国語や。暗記の科目は多分、何とかなる…」
少し俯き加減になりながら遠慮がちに指を折り、治くんが3つ科目を挙げる
侑「俺は、全部や!全部!!全部教えてほしいねん!!」
治くんとは対照的に前のめりでアピールする侑くんの勢いに、体が一歩後ろへ退く
治「なっ、ツム!お前図々しいヤツやな!!少しは自分でも何とかせえ!」
侑「はぁ?!何でそんな事サムに言われなアカンのや!」
さっきの満面な笑顔はどこへいったのか。睨み合い、今にも掴み合いの喧嘩が始まりそうな2人
「お、宮兄弟やん。何してるん?」
「天才ピアニストも一緒やで」
「侑く〜ん。治く〜ん」
「お、あの双子、もしかしてまた喧嘩かいな?」
ただでさえ注目を浴びる2人なのに……
双子の剣幕に教室内がザワつき始めた。何事かと教室の入り口には"興味深々"といった視線をこちらへ向けながら、通りすがりの生徒が足を止めて集まり始めている
あなた「ちょ、ちょっと。2人とも落ち着いて!」
ズイッと双子の間に割って入る。「まぁまぁ…」と宥めると、2人は黙りお互いにプイッとそっぽを向いてしまった
ハァ〜……
双子って、仲が良いのか悪いのか……
角名「なら、俺らもヨロシク」
あなた「フェッ……??!」
後ろから肩を叩かれ、角名くんが自分自身を指差しながら首を伸ばす
俺ら……?
角名「俺と、侑と同じクラスの銀島ってヤツと、あと7組の小作ってヤツ。ちなみに皆、バレー部」
あなた「えっ??どういうこt____________」
?「あ〜!もう間宮さん来とるやんか!!」
……誰?
角名くんへの質問を掻き消すように、2人の男子生徒が私の名前を呼んで、人混みを掻き分けて近付いてくる
角名「あ、あいつが銀島。で、その後ろにいるのが小作」
あ〜…言われてみれば、この前の練習試合でいた……かな
っていうか……
え__________________っ、!?!??
5人なんて……
聞いてないよ〜!!!
・
あなた「取り敢えず、授業はちゃんと受けようね。授業中は寝ないこと!いいですか!?」
「「「「「____________、はいっ、っ!!!」」」」」
目の前に整列しているバレー部5人。それぞれ1人1人を見上げながら、まずは基本中の基本を言い聞かせる
皆、背筋をピシッと伸ばして返事は良い
勉強会は、バレー部の朝練が無い日に集まることになった
早速、明日の朝から開始!
という事で話はまとまり、各々自分の教室へ戻って行った
いつの間にか人混みもなくなり、角名くんも自分の席へと戻って行く
そんな皆の後ろ姿をぼんやりと眺める
ハァ〜…
朝からちょっと疲れたかも……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。