第29話

29
879
2021/02/26 11:00
宮母「……なぁ、あなたちゃん。やったっけ?名前」


私達のやり取りを見ていたお母さんが、ご飯をよそう手を止めて私の顔を覗き込む



あなた「あ、はい。間宮あなたです」


宮母「あんな、違ってたら御免なさいね。前に、ウチの息子にハンカチ……ハンドタオルだったかな……貸してくれた事ある?」





あぁ、そう言えば……バレー部の練習試合を観に行った日に____________。
 


あなた「……あ、はい」


過去の出来事を思い出しながら、お母さんに返事をする



宮母「あぁ、やっぱり!嬉しいわぁ〜!こんな可愛らしい子が……で、どっち?どっちと仲ええん?あ、ハンカチは侑に貸してくれたんやったな?


最後は私にくっつくようにして、声を潜めて話しかけられた





あなた「?えぇっと……2人とも仲良くしてくれます」


宮母「はっ……?」


笑顔で返すと、お母さんはポカンと口を開けて数秒固まっていたけと、すぐに笑顔になり「あぁ、そう。ま、どっちでもええか。よろしくね」と再びご飯をよそい始めた















宮母 side





ちょっと驚いたわぁ……





ウチの息子2人。特に侑は、バレーの応援をしてくれる女の子に向かって「喧し豚!!」なんて言いながら睨みつけたりするもんで、女の子には興味ないんかと思って、ちょっと心配しとったんやけど



いつの間にか、こんな可愛らしい子と仲良くなって……





ま、ちょっと安心したわ〜





でも……面食いなんやねぇ。誰に似たんやろか?















あなた side





「「「ご馳走様でした!!」」」





あなた「侑く…あ、侑と…治が自慢するだけあって、本当に美味しかったです!
スパイスは…、詳しい事は分からないですけど、辛味の中にコクがあって……拘って作ってくれたのが分かりました。ご馳走様でした」


食べ終わった食器をキッチンへ運びながら、双子のお母さんへ伝える





宮母「そんなん言うてもらえたら、嬉しいわぁ。ウチの息子、特に侑は"質より量"やから頑張って美味しいもの作っても、あんまり褒めてくれんのよ」


皆のグラスにお水を注ぎながら、お母さんは顔だけ私に向けてニッコリと微笑む








宮母「あ、あなたちゃん。お家どこ?もう暗いから送ってあげるからね」


一日中お邪魔した上に、夕食までご馳走になって。これ以上、迷惑はかけられない





あなた「いや、大丈夫です。これ以上、ご迷惑はかけられないです。一人で帰れます」


水を飲みながら顔の前で手を振る



侑「何言うてん?送ってくに決まってるやろ」


治「ちょい待ち。お前が一番危ないわ。俺が送ってく」


おかわりしたカレーを頬張りながら、双子が顔を上げる





宮母「あんたら煩いで。あなたちゃん送ってくのは私や!!ほんで、食事中は黙って食べや!」











角名「あなた、今日はどうも。じゃあ、また」


銀島「お母さん、ご馳走様でした」
小作「お邪魔しました」」


侑、治「「おん。またな」」





皆が口々にお礼を述べて、倫くん達は駅へ。私と双子はお母さんが運転する車へ乗り込む



侑「ほな、あなたは俺の隣や!」


治「いや、あなたは俺の隣や!」


侑、治「「何やと!?」」


宮母「2人とも煩い!!
分かった、分かった……あなたちゃんは助手席!2人は後ろ!!」


言い合う双子に目を細めて鋭い視線を投げかけながら、お母さんがズバッと言い放つ

 

侑「そんな……殺生な…」


治「……しゃあないな…」



流石、母親!!双子はブツブツ言いながらも後部座席に乗り込んだ



宮母「ゴメンね。ウチの息子、いちいち煩くて」



お母さんが助手席のドアを開けてくれる


あなた「いえ。賑やかで楽しいです」


宮母「あ、そう?毎日顔合わせてると、ただただ煩いだけやねんけどね
ま、ええわ。ほな、行こか。あなたちゃん家どの辺?道案内はよろしくね」


あなた「はい。じゃあ、まずはこの道を真っ直ぐです」





私達4人を乗せた車はゆっくりと走り出した

プリ小説オーディオドラマ