宮母「……なぁ、あなたちゃん。やったっけ?名前」
私達のやり取りを見ていたお母さんが、ご飯をよそう手を止めて私の顔を覗き込む
あなた「あ、はい。間宮あなたです」
宮母「あんな、違ってたら御免なさいね。前に、ウチの息子にハンカチ……ハンドタオルだったかな……貸してくれた事ある?」
あぁ、そう言えば……バレー部の練習試合を観に行った日に____________。
あなた「……あ、はい」
過去の出来事を思い出しながら、お母さんに返事をする
宮母「あぁ、やっぱり!嬉しいわぁ〜!こんな可愛らしい子が……で、どっち?どっちと仲ええん?あ、ハンカチは侑に貸してくれたんやったな?」
最後は私にくっつくようにして、声を潜めて話しかけられた
あなた「?えぇっと……2人とも仲良くしてくれます」
宮母「はっ……?」
笑顔で返すと、お母さんはポカンと口を開けて数秒固まっていたけと、すぐに笑顔になり「あぁ、そう。ま、どっちでもええか。よろしくね」と再びご飯をよそい始めた
宮母 side
ちょっと驚いたわぁ……
ウチの息子2人。特に侑は、バレーの応援をしてくれる女の子に向かって「喧し豚!!」なんて言いながら睨みつけたりするもんで、女の子には興味ないんかと思って、ちょっと心配しとったんやけど
いつの間にか、こんな可愛らしい子と仲良くなって……
ま、ちょっと安心したわ〜
でも……面食いなんやねぇ。誰に似たんやろか?
あなた side
「「「ご馳走様でした!!」」」
あなた「侑く…あ、侑と…治が自慢するだけあって、本当に美味しかったです!
スパイスは…、詳しい事は分からないですけど、辛味の中にコクがあって……拘って作ってくれたのが分かりました。ご馳走様でした」
食べ終わった食器をキッチンへ運びながら、双子のお母さんへ伝える
宮母「そんなん言うてもらえたら、嬉しいわぁ。ウチの息子、特に侑は"質より量"やから頑張って美味しいもの作っても、あんまり褒めてくれんのよ」
皆のグラスにお水を注ぎながら、お母さんは顔だけ私に向けてニッコリと微笑む
宮母「あ、あなたちゃん。お家どこ?もう暗いから送ってあげるからね」
一日中お邪魔した上に、夕食までご馳走になって。これ以上、迷惑はかけられない
あなた「いや、大丈夫です。これ以上、ご迷惑はかけられないです。一人で帰れます」
水を飲みながら顔の前で手を振る
侑「何言うてん?送ってくに決まってるやろ」
治「ちょい待ち。お前が一番危ないわ。俺が送ってく」
おかわりしたカレーを頬張りながら、双子が顔を上げる
宮母「あんたら煩いで。あなたちゃん送ってくのは私や!!ほんで、食事中は黙って食べや!」
・
角名「あなた、今日はどうも。じゃあ、また」
銀島「お母さん、ご馳走様でした」
小作「お邪魔しました」」
侑、治「「おん。またな」」
皆が口々にお礼を述べて、倫くん達は駅へ。私と双子はお母さんが運転する車へ乗り込む
侑「ほな、あなたは俺の隣や!」
治「いや、あなたは俺の隣や!」
侑、治「「何やと!?」」
宮母「2人とも煩い!!
分かった、分かった……あなたちゃんは助手席!2人は後ろ!!」
言い合う双子に目を細めて鋭い視線を投げかけながら、お母さんがズバッと言い放つ
侑「そんな……殺生な…」
治「……しゃあないな…」
流石、母親!!双子はブツブツ言いながらも後部座席に乗り込んだ
宮母「ゴメンね。ウチの息子、いちいち煩くて」
お母さんが助手席のドアを開けてくれる
あなた「いえ。賑やかで楽しいです」
宮母「あ、そう?毎日顔合わせてると、ただただ煩いだけやねんけどね
ま、ええわ。ほな、行こか。あなたちゃん家どの辺?道案内はよろしくね」
あなた「はい。じゃあ、まずはこの道を真っ直ぐです」
私達4人を乗せた車はゆっくりと走り出した
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!