第42話

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2021/03/26 12:00
________________えっ!?









振り返ると今度は掴んだ手を引っ張られる





バランスを崩しかけて塀側に1、2歩よろけた















ブロロロ……



私のすぐ横を車が一台走り抜けて行く





あなた「あ、車……気付かなかった。ありがとう」


車から守ってもらったお礼を口にする





あなた「治くん?」


治くんは俯いて、私の手を掴んだまま離さない



治「なぁ、何でツムの事気にしたん?」


俯いたままジリジリと私に詰め寄り、さっきと同じ質問を繰り返す



あなた「えっ……??」


詰め寄られて、数歩後ろへ下がると背中に固くて冷たい塀が当たる感触がある



あなた「……だから、双子だし…。同じバレー部だし……」





治くんはそのまま私に近付き、ポスンと肩に顔を乗せる





治「双子でも、俺とツムは違うで……。俺だけ見てや」


あなた「____________、ん"んっ///」





耳元で囁かれ、背筋がゾクリ____________、とした。小さく声が漏れる





治くんの顔が近いせいで、耳が熱くなるのが分かる





治「フッ……耳、赤いで」





肩に感じた重みがなくなったと思った途端、サワサワッ、と指先で耳を弄られた





あなた「____________、ぅん"〜っ、、//」





もう一度背筋を走るその感覚に、思わず身を捩る










治「……ほな、もう行くわ」


何に満足したのか、口角を吊り上げて満足気にニヤリと笑うと「じゃあ、」と片手を上げて治くんは走って行ってしまった











あなた「____________//なっ、何なの〜?」



膝の力が抜けて、私はそのままその場にヘタリとしゃがみ込んでしまった
















あなた「ただいま〜…」










……バタバタバタバタバタバタ





猛「あなた!どこ行ってたんだよ?!」


あなた「へっ?!____________ぅわぁ!!」



玄関扉を開けるなり、猛が飛びついてきた





猛「なぁ、なぁ!ご飯食べたら遊ぼうぜ!!」





朝から元気いいなぁ〜…





猛「あのさ……」


グイっと体重をかけて腕を引っ張られ、されるがままに体が斜めに傾く



ちょうど私の肩の高さが猛の背の高さと揃った事を確認すると、口元に手を当てて耳打ちする仕草をしてくる





「今日も行こうぜ。昨日の体育館」


あなた「ん〜…何?猛、バレー観に行きたいの?」


周りには私達2人以外誰もいない。何で耳打ち?と不思議に思いながら返事をする



「しーーーー!!」

あなた「??何で?」

「バレーしてる人達の邪魔になるから駄目ってパパとママには言われてる」





あぁ、だから耳打ち……





あなた「う〜ん…。確かに練習の邪魔しちゃ悪いよね」





でも……キラキラとした瞳を私に向けて、希望に胸を膨らませる可愛い甥っ子の期待を裏切るのは心苦しい





それに、1人で勝手にあんな所まで歩いて行かれても困る……



普段歩き慣れている道ならまだしも、慣れない道……しかも途中、交通量が多い大通りを渡るのだ






あなた「あ、ちょっと待ってて」





部屋に戻りスマホを手に取る





画面に表示した名前に胸が騒めく。小さく深呼吸をして、通話ボタンを押す










『プルルルル____________、プルルルル____________、』





〈もしもし、おはようさん。どないしたん?〉


あなた「あ、北さん……。おはようございます」


北〈おん。ぉはよう〉


あなた「あの、今日なんですけど……」











あなた「猛〜!猛〜……」


猛「ん〜?」


リビングダイニングを覗くと食事中の猛が口の周りに玉子焼きの黄身をくっ付けた顔でこちらへ首を振る



そんな猛に向かってニコリと笑いながらOKサインをだす



意味を理解して、猛は白い歯を見せながらニカッと笑い、頷いた











義姉「猛、あなたちゃんに迷惑かけないようにね。昨日みたいに1人で勝手にフラフラ出歩いちゃ駄目よ」


猛「あーもう、わかってるってば!!」


あなた「もう…そういう事しないの。ほら、行くよ」


玄関先で見送ってくれるお義姉さんに向かってアカンベ〜をする猛の手を取り「行って来ます」と外へ出る



行き先は猛の望み通り、運動公園にある体育館だ

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