第32話

#32
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2024/04/03 06:43
【シルクsaid】
勢いに任せてあなたの下の名前の家の前まで来た


玄関のチャイムを押して

ドアをノックする

返事は相変わらずない







あなたの下の名前。お前に届いてたコメント読んだよ。



ごめんな。気づけなくて…。




気づけなかったどころかむしろ責めるようなことして悪かった。




アンチは絶対俺らで何とかするから

もう1回戻ってきてくれないか




もう1回お前とFischer'sやりてぇんだ。











ドアに縋り付くように言うと









部屋の中から音が聞こえた




あなたの下の名前!?


慌てて叫ぶと



「友達としても…もう付き合わないって言ったのはそっちじゃん。」



あいつじゃないみたいなか細い声





あの時は…状況が分かってなかったんだ…。

頼む。俺は…お前にFischer'sに戻ってきて欲しい。




「嫌だ。」



さっきとは違うハッキリした声が返ってきた



なんで…。




「今更どんな顔して帰ればいいって言うの。」


「アンチに叩きのめされた…情けないメンバーなのに。」




「あんただって思ってんでしょ。」

「『こういう活動していく上でアンチなんていくらでも湧くんだからいちいちダメージ受けるなんてバカみたい』って。」



「それだけで辞めるなんてダサイって。」







思ってねぇよ。



俺たちはいつでもお前に戻ってきて欲しいって思ってるから。

どんな顔して帰ろう、なんて考えなくていい。












仲間だろ。




お前はFischer'sの初期メンバーなんだから…抜けて欲しくねぇよ。





必死に力説してあいつからの返答を待つ



















「もう仲間じゃないよ。」


あなたの下の名前が冷たい声で言った








「そうやって…いつまでも『仲間』とか言って引き止めてんの…ダサいよ。」

「そんなに必死に引き止めて何になるの。」

「大人になりなよ。」





一言一言が重く心に刺さる







いつか遠い昔に


自分の夢だったYouTubeをバカにされた時よりも

それよりも何倍も苦しかった






「都合のいい時だけ仲間にしないで。」







それだけ聞こえて



部屋の奥に戻る足音が聞こえた




























俺が今まで1番大切にしてきた『仲間』っていう存在は






何があっても切れない関係だと思っていた存在は





こんなに儚かったのか

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