みどりくんは無言のままで、皆と同じように少し離れたところに立った。
「オレノ能力は"コマンド"。」
「サッキ、キョーサンニ言われてカケタノハ〖gamemode〗ヲ変えるヤツ…。〖クリエイティブモード〗ニカエタ。」
そこまで言ってみどりくんは、きょーさんの前まで進んだ。
「ナイフ貸シテ」「ええで」そんな会話を聞いて少し首を傾げる。
ナイフを使って何をするのか、そんな疑問が湧いてきた。
「〖クリエイティブモード〗ハ外部からノ ダメージ ヲ受けなくナルモノ、浮くコトモデキル。」
そう言ってみどりくんは、きょーさんと同じように自分の腕をナイフで切りつけた。
だがそこからは、血が溢れ出すわけでもなく、ただ光の線が入っているだけだった。
そこまで見て、ハッと自分の体を確認する。
腕や足なんかにうっすらと、沢山の線が入っていた。
きょーさんの光の針に刺されても、何ともなかったのは、このコマンドのおかげだった。
しかし、それより気になることがひとつある。
「…浮けるって言った?」
「ウン」
みどりくんの足が地面から離れた。
背中から羽が生えてる訳でも無いのに、その場に浮いていた。
「ラダオクンモ浮ケルト思ウ」なんて言われれば浮きたるなるのが、人間の性。
「浮きたいーとか思ってたら、多分勝手に浮くよ。」
「俺らも初めての時は、めっちゃやってたからなぁ。」
助言をくれたのはコンちゃんとレウだった。
少し半信半疑なのだが、頭の中で浮きたいと願う。
すると、少しの浮遊感と共に自分の体が宙に浮いた。
「おぉー!」と感嘆の声をもらしてスイスイと動く。歩くモーションをしなくても、ゲームの中のようにそのまま前に進む。
そのまま宙に止まることも出来て、正直とても楽しかった。
「他ニモ〖tp〗ナンカモアル。」
「/tp radaokun midorikun」
そうみどりくんが呟くと、一瞬で景色が変わったかと思ったら、目の前にみどりくんがいた。
いた、のでは無く自分が来たのだろうけど…。
凄いと思って、もう少しやってもらいたかったのだが少し前に話したことを思い出した。
「それってさ、どれだけ使ったらおばけになっちゃうの?」
「ンー…。ワカンナイ!」
元気よく答えたみどりくんを、思わず半目で見てしまった。
使いすぎたらって言ってたけど、今はまだ大丈夫そうだ。
「それで、俺らは終わったけど。どうするんや?」
全員のを見せてもらった。
皆凄い力を持っていて、何度も驚いてしまった。
なら、次やることは…。
「計画を立てよう!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。