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2021/08/10

第11話

見せてよ きょーさん編

レウが終わってから、少しやつれて進んだのはきょーさんだ。
小さく悪態をつきつつも、同じように少し離れていく。
その途中できょーさんが振り返った。

「あ、らっだぁ。ナイフ貸してくれへん?」

「え?いいけど…。」

少し困惑しつつも、普段何かあった時用のナイフを腰から抜き取って彼に渡す。
そのナイフは何度かお世話になっているため、よく研がれている。
おまけに切れ味も抜群なので、少し渡すのを戸惑ってしまった。
(急にグサッといかれたりして…。)
そんな不安を抱えつつも、彼にそんな気はないことがわかって少し安心した。

「まぁ、俺のは何回か見られたと思うんやけど…俺の力は"天使"」

そう言いながらきょーさんは、渡したナイフで腕を切った。
いきなりそんなことをするとは思っておらず、目を見開いて驚いてしまった。
どうしようと焦って周りを見ても、皆まっすぐきょーさんのことを見ているだけである。
少し心配だが、諦めてきょーさんの方に向き直った。
だけど異変が起きたのはその後だ。
あんな傷、血は止まっても一日では治るようなものでは無い。
なのにきょーさんの傷は、もう既に血は止まりなんならもうくっつき始めている。
恐ろしく早いその回復に思わず「はえ〜」なんて間抜けな声が出た。

「じゃ、次な。」

きょーさんは手を頭上にあげて人差し指を立てた、そのまま一回転ぐるっと回す。
すると彼の頭の上にはいつの間にか、天使のリングが浮いていた。
「天使なんやから、形だけでも、な。」楽しそうな笑顔が浮かんだ。
そのままきょーさんは両腕を天高くあげる。

「どりみー!」

「アァ、マカセナ!」

そう言ってみどりくんは何かコマンドを打ちはじめた。
「Enter…。」とみどりくんが呟いたと思えば、体がいつもとは違う感じがした。
きょーさんが高くあげた腕を振り下ろす。
その瞬間ここら一帯に光の針か槍かが降ってきた。
雨のように降り続けるそれは、当たれば一溜りもないだろう。
だがそれらは自分に当たっているはずなのに痛みはなく、傷もついていなかった。
運悪く空を飛んで、地を歩いていた鳥や動物は、無様に光の針を叩きつけられ物言わぬものとなっていた。
ようやくそれが止まって、周りを見渡すとびっくりするほど変わっていなかった。
数匹、なにかの残骸があるくらいで光の針はどこにもない。

「光が降り注ぐ、ってよく言うやろ?」

そういたずらっ子ぽく笑う彼は心底楽しそうだった。
だけどそこら中に転がる亡骸を見て、恐ろしいなと思ってしまった。

「この能力は強い。でも光のある場所でしか使えんのや。真っ暗な部屋に閉じ込められた時はどうしようかと思ったわ。」

恐らく、閉じ込められたことがあるのだろう。
水神もクソもないな…。と心の中で舌打ちした。
きょーさんが戻って来て俺の目の前に立つ。

「眉間に皺入っとるで。」

そのままデコピンされた。
気付かぬうちに力を寄せていたようだ。
少し恥ずかしくなって顔を背けてから、「うるさいよ…。」と呟いた。
その俺を見てきょーさんは大きな声で笑った。
よりムッとすれば、「悪かったって」と謝られる。
その声に少し笑いが含まれていたが、まあいいと思い顔を戻す。



「器用な顔やな。」



そう言ってまた笑われた。