ヤバい…私は今、確実にヤバい状況下に置かれている!!私の脳味噌は全力で警戒のサイレンを鳴らしていた。まさか本当に襲ってくるとは思わないが、彼の目は……本気の目だ。
なんだか怖そうな人だと思っていたし、その気になれば本当に何かして来そうなオーラを醸し出しているから、尚更ヤバいと思った。
なんとかこの体勢から抜け出さなくてはならない。だけど、少しでも動くことを許さないような彼の目が、私の中の僅かな勇気すら削いでいく。
怖い。怖い、怖い…。私が動かなくては、この状況を打破するのは不可能だと分かっているのに、私の心を支配するのは圧倒的に恐怖心だった。こんな恐怖、今まで体感した事がない。
人間は、本当に恐怖に陥ると、その場から全く動けなくなるんだなと思った。どうにもならなかったり、気が大きく動転すると、本当に何も出来なくなるらしい。
ちょっと前に見たドラマで、横断歩道に押し出された女性が、自分の方にトラックが来ることを分かっていながら動かなかったシーンをふと思い出した。
早く逃げなよ!!と思ったが、逃げられるわけがなかった。ドラマの話でありながらも共感してしまった。誠に今更ながら。
今の私には何も出来ない。私の出した結論はそれ1つだけだった。少なくともたった今のこの状態では、私にはどうすることも出来ない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。