真新しい制服に手を通して、自分も今から高校生なのだということに少しずつ実感が沸いてくる。
詩織が行く高校は制服が可愛いことで有名なところだが、自分が着ていると、さほど可愛くないことか不思議だ。
校門へと続く桜並木の道は、驚くほど綺麗で桜が満開だった。
今日は、春にはあまりふさわしくない天気だ。天気予報では最高気温が28℃まで上がるらしい。その事をチェック済みの詩織は入学式どころではなかった。
詩織にとっては、この天気が最悪なのだ。
気温が24℃以上だと倒れる確率が上がるのだ。
クラスが書かれた紙から自分の名前を探しだし、そのクラスへと向かった。
ちょうど席についたとき、先生が入ってきて体育館へ行けという指示があった。
いよいよ、入学式だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!