第3話
2
この世界の私の父親は本当に狂っていた
ゾクッ
と、鳥肌が……
メイドたちから盗み聞きした情報によると今私が住んでいるパール宮は元々皇帝の妾たちが住む場所でいわば皇帝のハーレム
だけど私が生まれた日皇帝が……
パール宮の人々を全員殺してしまったそうだ
それはパール宮だけじゃなくルビー宮でも私が生まれる数年前にあったそうだ
私の母親は皇宮の宴会に招待された唄い手で皇帝に気に入られ一夜を共にした後捨てられ……
赤ちゃんの私を残して死んでしまったらしい
その後皇帝は娘の私まで放置し続けている
だから私を育てたのは自然の力
ではなくパール宮にいるメイドたちだ
私みたいな赤ちゃんをそんな残酷な皆殺しがあった宮に置いておくなんて……
初めてその話を聞いた日から毎晩悪夢を見た
だけど私は悪夢より…
顔さえ知らない皇帝のほうが怖い
いきなりまたおかしくなって私も殺しに来るんじゃないの?
この宮にいた人たちみんな殺したように
怖いから他のこと考え
小説の中のアリス姫は18歳で悲劇的な死を遂げる
それも実の父親である皇帝の手で!
ガチャッ
えっ!
はぁまた始まった
みんなパール宮に追いやられてるのは一緒だから悪口はやめましょうよ
これじゃあ私がいつも泣きわめいているみたいじゃない
私みたいな泣かない子がいたら出てきてよ!
ヘンリーも心配するほどなんだから
皇帝が一度も会いに来ないからやっかい者の姫って下に見てるんでしょ
それが悲しいかって?
とんでもない!
私の目標はこのままずっと今みたいに脇役姫として過ごすこと!
だからお願い私のこと忘れて
これでも皇宮だから三食しっかり出るし
ベッドもフカフカで心地いいし
愛されない運命としても姫暮らしは幸せ
早く成長して金を集めて逃げ出さないと
ひとまずこのゆりかごをから抜け出すのよ
バタバタ
そうよ
私だってこんな宮で暮らしたくない
逃走費用さえ集まればすぐに脱出よ!
よしよしかわいい私の金よ
スリスリ
チュチュ
キャッキャッ
私はカーペットの上をハイハイ出来るようになった
やっぱり皇宮ってすごいんだな
本物の金と宝石だよね?
ヘンリーは私が輝くものが好きなのだと思ったみたいだけど
ヘンリーは私の幸運の女神!
宮殿自体は豪華絢爛だけど予算不足で私のものは少ないのに!
パール宮での生活は平和だった
最初はハラハラしたけど数ヶ月過ぎても音沙汰がない皇帝は本当に私を忘れたようだ
今まで緊張してた人たちも安心し始めたようだし
私はご飯をしっかり食べ運動もバッチリ
夜はぐっすり寝て毎日スクスク成長中
やっぱり早く歩けるようになりたい
ところで気のせいかな?
この部屋の飾りが少しずつ減っているような気が……
まずはオムツから取り替えよう
恥ずかしいけど
この世界には魔法使いがいるらしい
ただの外国じゃないと思ってたけど…本当に別世界!
今度絶対にこの目で魔法を見るからね!
え⁉
妻も娘もほっぽり出して今何してるかわからないヤツ?
ペチペチ
オベリア帝国の現皇帝は悪魔に従い狂った暴政を行った暴君をやっつけた英雄……だって?
パール宮、ルビー宮で残酷な殺人を犯し自分の娘も気にかけないヤツをまるで聖君のように描くなんて!
いくら童話だからってこれはないでしょ!
知りたくもない!
そんなサイテー野郎なんてどうでもいいわ!
えっ?