早くここから出たい。
一刻も早くこのホテルから出たい。
生意気なガキにキスされたなんて。
絶対にあってはならない。
自分のプライドが許さない。
「了解しました。」
黒の上着を羽織る。
あんな事…早く忘れたい。
ふと、鏡の自分と目が合う。
視線を落とす。
“プルルルルルル”
「到着しました。」
車に乗る。
いつもの車のはずなのに、
何故か違うように感じる。
今は現実を見たくも無い。
真紅のスマホをいじる。
「到着しましたよ。」
いつものHIMMEL本部。
兄さんにこの屈辱的な跡は見せたくない。
首を隠していた手を強引に解かれる。
認めたくない。
私が負けたなんて。
予想外の兄さんの反応。
兄さんはいい人。
いい人過ぎる。
義理の妹に過ぎない私に
ここまで温かく接してくれる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。