一晩一緒に過ごした私達は、同時に家を出ることになった。
そうやって私のことは色々知ろうとする。
自分のことは何にも話してくれないクセに。
わざと聞いてしまった。
…他の女の人のお家に行くって分かってるけど。
私の言葉に、さとみくんは何も言えなくなってしまった。
こんなこと聞いた私も意地が悪い。
さとみくんは私をフワッと抱きしめた。
さとみくんのいい香りがする。
この香りを嗅いでるのは私だけじゃないんだよね。
いっその事、私といることだって仕事なんだと言うことを言ってしまいたい。
とうとう言ってしまった。
私がずっと思ってたこと。
私の事なんて、ただ毎日レンタルしてくれる人。そうとしか思ってないんでしょ?
私はそそくさと玄関を開け、外へ飛び出した。
…傘、持ってくるの忘れた。
確か天気予報で、今日は雨って言ってたな。
空を見上げると、灰色の雲が広がっていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。