私はお弁当を食べ終えると
部屋に戻ろうと立ち上がった
すると
賢人くんがいつの間にか私の隣にいた
そうだ、賢人くんにお礼言わなきゃ、
私の顔を見て
真剣な顔で言う賢人くん
あ、なんか...今...
私の心臓がなにか音を立てた気がした
それだけ言って私の頭に手を置くと
賢人くんは立ち上がっていってしまう
私も...言いたいこと言わなきゃ、
賢人くんは私の目を見ずにそういうと
リビングから消えていった
どうして...
どうして私の前からみんな居なくなるの...?
私の何がいけないの...?
私はそのあとお風呂に入って洗面所に向かった
歯磨きをして寝るために
今日は...早く寝て、いろんなこと考えずに済ませたい
私が歯ブラシをとった時
私が何気なく見た鏡に
紫耀が映っていた
私を見た紫耀はどこか悲しそうな顔をしていた
でもそれは一瞬のことで
すぐにいつもの顔に戻った
...前みたいに話せない
私はそう思った
紫耀と前みたいに楽しく友達として話したいのに
紫耀に...壁を作られてるみたいな
変な距離を感じる
前はこんなもの無かったのに...
また、私の前から大切な人がいなくなるの...?
それから私は
しばらくして歯磨きを終えてその場を去った
紫耀への答えは...何も言えなかった
私が何か言ったら...
紫耀までも目の前から居なくなってしまいそうで
私のことをもう見てくれなくなりそうで
怖かった
ほんと、私って最低だ
好きでもない人のこと、1人になりたくないからって
手放さないように見放されないように
ちゃんとはっきり気持ちを伝えないで
これこそ、人の気持ちを弄ぶって言うんだろうな...
まっけんが明日帰ってきたら
絶対に話をしなきゃ行けない
ちゃんと自分の気持ち...確かめないと
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!