先輩
ん?
校内を歩きながら私は先輩に話しかける
磯村...先輩と...仲良いんですか?
あ〜、勇斗?まあ仲良いかな、
そうなんですね...
でも...なんで勇斗?
あ、いや、別に大した理由は...
まあモテるしな〜、あいつ
そういう、ことじゃなくて...
ん?
あ、いえ、やっぱり...なんでもないです
あなたちゃんも勇斗のこと好きなんだ?
...え?
そこらへんの女子はみんな勇斗のこと好きだもんな...それだけかっこいいのは認めるけど笑
...私、
ん?
私、先輩のことどう思ってるのか...分からない、です
先輩って...勇斗のこと?
...はい
...やっぱり、何かあるんだ
...あ
体育館に集まってから勇斗の様子もおかしかったし...あなたちゃんと会ってからってことか
.......
勇斗と何があったの?言いたくないならそれはそれでいいけど...
...先輩、私の事好きなんです
え?
だから...その...
告白されたの...?
...はい
勇斗に...?
...はい
まじか...じゃあ勇斗 本気で...
あ、でも...今思えば、ちゃんと好きって言われてない...かも...
どんな感じで言われたの?
俺、意外と本気だからって...
本気...
先輩、その時呼び捨てしてたし...
言葉にすればするほど
磯村先輩と会ったあの光景が蘇ってくる
さすがに...
最後のアレは話すわけにはいかない...
勇斗も1人に決めたんだな...やっと
今まで...彼女とかは...?
いなかったよ、俺が知る間は
え、そうなんですか...?
うん、意外だと思うけど...
でも勇斗はモテても本当に好きな人としか付き合わない
それって...
あなたちゃんのこと、本気で好きなんだよ
そんなわけ...
あると思うよ?笑
あなたちゃん、可愛いし
...!?
ごめんごめん、言われ慣れてないのか笑
ほんとに可愛いのにな...
あ、あの、可愛いかどうかは別として...
私、磯村先輩にそれからどういう顔して会えばいいのか分からなくて...
どういう顔って...そのままいればいいんじゃない?
そのままが分からないから言ってるんですよ...!
分からないって...
じゃあ、今までどうやって勇斗と会ってたの?
え...それは...
もうその時点で、意識し始めてるって事なんじゃない?
え...
だから、普通に...そのままの自分で勇斗と接していけばいいんじゃないのかな〜...
.......
...あ!勇斗!
え?
板垣先輩の視線の先には
磯村先輩と果耶の姿があった
ちょっと、先輩...!?
いいじゃん、こういうのが逆に手っ取り早いって
な、何言ってるんですか...!?
...!
...ちょ、ちょっとあなた...!
...ごめん、果耶ちょっと来て...!
果耶が急いで私のところに走ってくる
ねえ、どういうことなの...?
私にもよく分かんないけど...!
板垣先輩が...急に...
急にって...何か話したの?磯村先輩とのこと、
聞かれたから...少し...
そっか...
でも、逃げてるだけじゃなくてちゃんと向き合わないといけないのは私も同感だよ
果耶...
私が話繋げるのも一苦労だったんだから...
ここからは、あなた、ちゃんと話してきてね
...うん、
あなたちゃん!
は、はい
私と果耶が話し終わったところで
板垣先輩の私を呼ぶ声がする
じゃあ、ここからはペアシャッフルするってことで...逆になろう
逆?
うん、俺がその子とで、あなたちゃんは勇斗とペアね
...はい
...ちょっと待てよ、
異論は認めません!
じゃあ...俺たちは行くよ
頑張って、あなた
う、うん...
.......
私と磯村先輩だけになると
誰も何も言わない沈黙が始まった
先輩と...こんなふうになりたかったわけじゃない...
もっと楽しく...
ペアになっても楽しく話していたかった
だから
先輩
.......
磯村先輩
...なに
ごめんなさい
...え
あの日...私、何も言えなくて
先輩の...気持ちは、よく分かったつもりです
.......
でも、私今は...
先輩とはそういう関係にならないでいたいです
先輩のことが好きとか嫌いとかそういうのじゃないんですけど...
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!