翌朝ー
(藤ヶ谷が、藤ヶ谷が俺を学校へ連れて行ってくれるって)
俺は、超嬉しくて。
胸元のポケット、そこから顔を出し見上げれは大好きな藤ヶ谷の顔が見え。
ドキッと胸が高鳴り、そそくさと身を沈めた。
(んふっ、太輔の匂いがする)
ガチャ、バタン!
ギュッとしがみつけば自転車は風を切って走り出し「すっげぇ~まるでジェットコースターみたいだ、ひょぇーっ」思わず顔を出したら。
途端に怒られてしまい「うっ、だからってそんなに怒鳴らなくたっていいじゃん」チャリンチャリン、後ろから1台の自転車が追いついて来て隣へと並ぶ。
(この声はニカじゃん)
(お前…)
が、冷やかな藤ヶ谷の態度に。
(くっ…)
「違うんだニカ」黙って、自転車のスピードを上げる藤ヶ谷。
ニカの叫び声が後ろで響き渡っていた「ごめん本当にゴメン」真実を話すことが出来ない現状がドッと押し寄せ胸が苦しくなる、それでも今はどうする事もできないと心で呟きながら。
・藤ヶ谷side
俺はさっきのニカとのやり取りが気に掛かり、こいつに声を掛けてみたんだが。
返事はなく…
(ごめんワタ、でも北山を護れるのは自分しかいない
だから)
俺らの話を聞いて、北山が口を開く。
が、それに触れるとまた黙り込んでしまい「気に
しているんだ…」
(そうか北山は俺のことを気にしていたんだ)
(こうやって自分のことで周りに言われたり)
(ふだん通りの付き合いができないでいることを)
(やっぱ連れて来るべきではなかったのか、だけど
独りで家に置いとくのも心配だし)
結局この日、北山はあまり喋らず俺もあえて聞かないでおこうと心に決め1日は終わりを告げた。でも次の日も、そのまた次の日も。
キンコンカンコーン、キンコンカンコン!
二人して屋上で、お弁当を食べていたとき。
そう言った、こいつの表情は暗く。
(なに?)
そのまま黙ってしまい…
その日の夜。
何故だか、ひろはピエロの格好をしていて。
(こいつ、何を考えているんだろう?)
枕の上で、ポヨーンぽよーんと飛び跳ねている。
言われて気づく…
(そっか、そういう事だったのかゴメン、そして有り難う)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!