第30話

もう1つの世界②藤→北→藤ヶ谷side
312
2020/06/25 03:46
最近、なんだか北山の様子が変だ。

横尾
意識しているって太輔のこと?
藤ヶ谷
俺にはそう見えるんだけど
横尾
それって太輔の願望じゃない、クスッ
藤ヶ谷
違うよ
横尾
違くないでしょ


(そりゃ俺ばっか北山のことが好きで、あいつは滝沢くんとか大倉、薮なんかと仲良くしてさ。こっちの気持ち、ぜーんぜん気づいてくれないから)

横尾
俺とイチャイチャし始めたんだよね
藤ヶ谷
ワタ
横尾
心の声、だだ漏れだよ
藤ヶ谷
ぁ…‥


(あはっ)

藤ヶ谷
でも意識しているのはホント
横尾
うん、けっこう太輔のこと見ている
藤ヶ谷
なんでだろう?


すると、ワタが。

横尾
生き霊にでもなっちゃった?
藤ヶ谷
はっ?誰が
横尾
太輔、ミツのことが好き過ぎて
藤ヶ谷
なわけないじゃん
横尾
あははっ


昔から俺とは違い交流範囲が広くいろんな人と付き合っていた北山、デビューしてからはさらに範囲を広げ、それに引き替え自分は益々人見知りが激しくなり。

横尾
そう言えば、このあいだミツの家へ
行ったとき


(鏡?)

横尾
そう、なんていうのかなぁ


それは決して大きくはないが、まるで白雪姫に出てくるような。

藤ヶ谷
継母の鏡?
横尾
イメージ的にはだよ
藤ヶ谷
そんなもん何処から?
横尾
日本人妻で海外ロケへ行ったとき見つけたとか言ってたな


(ふーん…)

でも俺達は、北山に異変が起きている事までは気づいていなかったんだ「鏡は人の心の裏を映す」奥に秘められた願望は自分だけじゃなかったって事に。






・北山side
藤ヶ谷
ねぇいつまでトイレの中で籠もって
いるつもり?出て来なよ


ドキドキ、ドキドキ心臓が高鳴る「あぁ~どうしたらいい?」俺は藤ヶ谷と2人っきりになったときの対処法を知らない。

(だって、いつもは誰かしらが傍にいるし)

むかーし昔、まだJr.だった頃2人で出掛けたりしたことはあったけど、あの時はまだ意識していなかったから。

だけど気づけば…

藤ヶ谷
きーたーやーまー北山 宏光うぅ
出て来ないなら俺帰っちゃうよ


(んっ?帰る…)

その数分後、辺りはシーンと静まり返り「マジでか!?」

北山
ちょ、藤ヶ谷!


慌ててドアを開け、飛び出したら。

北山
いない、藤ヶ谷、おーい


(嘘だろ…)

部屋中を探し回ったけど何処にもいなく「ハッ、そうだ洗面台」再び忽然と消えてしまった藤ヶ谷がいた痕跡…(どういうこと?これ)

翌日、俺は意味不明のままフジテレビへと向かい。

千賀
へぇ~そうなんだ
二階堂
じゃ昨日はワッターと2人で?
藤ヶ谷
そう、ショッピングをし映画を見て
千賀
なにそれ?まるでデートじゃん、クスッ
二階堂
あっ、ミツ


んっ?と藤ヶ谷が、こっちを見た。

(つうか横尾さんといたって、じゃ昨日のお前は誰なんだよ?)

横尾
ミツ、おはよう
北山
あっ、なぁ
横尾
ちょっといい?


が、俺が聞く前に横尾さんから呼び出しを受け楽屋の隅の方へと連れて行かれて。

横尾
ミツ、なんかあった?
北山
えっ、どうして
横尾
様子が変だって太輔が心配してたから
北山
藤ヶ谷が?横尾さん
横尾
なに
北山
昨日ずっと、あいつと一緒にいたの
横尾
夜までね、それがどうかした?
北山
別に
横尾
‥‥‥


(ってことは、時々俺んちに現れる藤ヶ谷っていったい?)






・藤ヶ谷side
横尾
やっぱりミツちょっと変だね


キスブサの収録前、ワタが北山の様子を伺ってくれた。

藤ヶ谷
どんなふうに?
横尾
何かを気にしているみたい
藤ヶ谷
何をだろ?
横尾
俺が思うに太輔のことだな
藤ヶ谷
俺は、あいつに何もしちゃいないよ
横尾
してたら大変でしょ


(えっ)

横尾
もっとミツが重症化してしまう
藤ヶ谷
あ、あのさ俺ってそんなに北山に
とって害を及ぼす存在?
横尾
時と場合によっては
藤ヶ谷
どういうこと?


「クックックッ」と、意味深に笑うワタ。

横尾
そんなに気になるなら本人に直接
聞けばいいじゃん
藤ヶ谷
出来ないの分かってて言っているだろ
横尾
うん、だってそろそろ進んでも
いい気がするし
藤ヶ谷
‥‥‥
横尾
勇気を出して案外ミツも待っているのかもしれないよ
藤ヶ谷
そうかなぁ
横尾
そうさ
藤ヶ谷
それってワタの願望じゃない
横尾
ふふふ、どうだろね


そんな俺とワタのやり取りを楽屋の隅で、チラチラと見ている北山。

二階堂
ミツ、帰ろう
北山
おう


(俺が一歩、前へ踏み出せば何かが変わるのか?)

玉森
始まるんじゃない
藤ヶ谷
タマ
玉森
俺のときにそう言って背中を押して
くれたのガヤだよね
藤ヶ谷
そうだっけか?


それからワタとタマの3人で会った時にもそう言われ、しかし「長い付き合いだからこそ、きっかけがなかなか掴めなくて難しい」そう思っていた矢先のことだった。

.
あれ?これ北山くんのスマホじゃない
.
忘れちゃったのかな、結構そそっかしいね


「えっ」それは、たまたま某雑誌社へ撮影のために行ったとき。

藤ヶ谷
あの北山が何か?
.
あっ、藤ヶ谷くん


偶然にも、あいつが先に来ていたらしく。

.
ちょうど良かった、これ届けてくれない?ないと本人も困るでしょ
藤ヶ谷
分かりました


その日、俺は北山のマンションで信じられない光景を目の当たりにする事となる。

鏡に向かって話す…





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