第9話

すれ違う心③藤ヶ谷→北山side
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2020/06/13 09:56
帰ってきたら、いきなり。

戸塚
ごめん藤ヶ谷また今度ね


何かに追われるかの如く帰って行くトッツーに。

河合
ちょ、トッツー


慌てて後を追う郁人、その後ろ姿を見送りながら。

藤ヶ谷
ひろ
北山
ギクッ
藤ヶ谷
出て来い!


シュンっと、うなだれ姿を現したこいつを見て全てを悟った気がした。

北山
太輔…あの‥な
藤ヶ谷
何をやっているんだよ気をつけろって言ったじゃん
北山
おっ、俺だって静かにしていようと
藤ヶ谷
じゃ、どうしてトッツーは帰ってしまったんだ?
北山
ちょ…っと‥コケて…さ‥声が


(やっぱり、ハァ)

藤ヶ谷
それから?まだあるんじゃない
北山
お腹…鳴っ‥ちまい
藤ヶ谷
続けて声を出してしまったってわけか
北山
うっ


(おいおい…)

北山
んだって俺、昼飯
藤ヶ谷
言い訳はするな、ったく誰の
ためにこんな
北山
‥‥っ


ハッと思ったときには遅かった。

北山
だよな俺が悪い
藤ヶ谷
違っ、ひろ
北山
俺がこんなふうになってしまったから
藤ヶ谷
そういう意味じゃ
北山
悪かったよ迷惑をかけて藤ヶ谷お前
優しいから、俺もつい甘えてしまい


(ひろ、ねぇ聞いて俺の話し頼むから)

北山
悪い暫く独りにしてくんない


それから口をきいてくれなくなり夕飯を食べているときも、お風呂に入っているときも無言のまま布団の中へ入り眠りについてしまう。

(ごめん許して、ひろ)

部屋中に重い空気が流れ堪らなくなる傷つけてしまった後悔の念に駆られながら、翌日…

太輔、いつまで寝ているの?もう
10時よ早く起きなさい


(ガバッ、やっべ)

ほら、あんたがここにいたら掃除機
かけられないでしょ
藤ヶ谷
かっ、母さん


(えっ)

なに驚いているの?
藤ヶ谷
だって…


まずい北山が、そう思い枕元を見て固まってしまう

変な子ねぇ、ご飯キッチンにあるから温めて食べて


(いない、嘘だろ!?)

藤ヶ谷
母さん、いつからここに?
いつからって?ほんの数分前に
藤ヶ谷
どいて!
きゃっ、ちょ太輔


ベットの下、デスクの上、卓上カレンダー、本棚、引き出し、机の下、床の隅々を捜してもどこにもいない。

(マジか、ドドドッ!)

太輔!


(階段?待て、あいつが独りで降りるにはかなり時間が掛かるってことは、ハッ)

藤ヶ谷
母さん、父さんは?
あぁ、ゴルフに行くとかで早くに
出かけたけど
藤ヶ谷
それっていつ?
そうねぇ5時ころだったかしら
太輔の部屋に1度行き


(俺の部屋に?)

探し物でもしていたみたい


(それだ、まさか朝の弱いあいつがそんな早朝に)

藤ヶ谷
ちょっと出掛けて来る
どこへ?


(5時間、けどそんな遠くには行ってはないはずだ)

太輔!


(ひろ、戻って来い独りじゃ危ないから、ひろ)

俺の心臓は張り裂けそうだった、あいつを失ってしまう恐怖に怯え。





・北山side

(太輔、寝たみたい)

モソモソモソ、俺のため少し枕元を明るくしてくれてるから起き上がり傍まで行くと夜中でも綺麗な顔がよく見える。

(俺が一緒にいたら太輔は苛々しストレスが溜まるだろう今日みたいに一方的に怒り俺そんなお前を見たくはないんだ)

それに…

北山
横尾さんに悪いしな


(もう解放してやるよ、ただファーストキスの相手をしてくんない)

その唇へチュッとキスを落とし頑張って下へと降りて行く、そして扉のそばまで行くと「ドアよ開け、ん~開け扉」念じること数時間、願いが通じたのかガチャっと開き。

(あっ、おじさんだ)

えいっとターザンの如くその足へ飛び乗って正確にはしがみつきだけど。

(わわっ、わっ、もちっと静かに歩いて下さい、お願いしーます、ひぇ~落ちる落ちるってばぁ)

ガチャ、バタン!なんとか外へと連れ出してもらい

北山
ふぅ~行ってらっしゃーい、おじさんありがとね


(さてと…)

目の前に広がる道路、歩いて行ったらどれだけ掛かるのやら。それでも、もう後戻りはできないと再度振り返って。

北山
バイバイ、太輔


俺は前へ1歩、足を踏み出し歩いてく独りで生きて行く決心を固め。

それからいっぱい、い~っぱい歩いて「プップッ、プゥーッ、ひやぁ排気ガスすっげぇ毒ガス振り撒いてらぁ」ヨタヨタヨタ…

お腹は空いたし寝てないから身体はくたくたで、辿り着いたところは公園「どこか眠れるところはないかな?」探していると。

(あっ、あんな所に手提げバックがある多分すぐ側で遊んでいる子のだな、ちょっくら拝借よっこらしょ
んーいい感じハンカチが布団がわりになるし)

北山
おやちゅみぃ~


「こら、そんな所で寝たらダメじゃん」
(太輔がいたらそう言われそ、んふふっ)

河合
舞彩ちゃーん
舞彩
あっ、郁兄ちゃん
河合
ママが呼んでるよ
舞彩
えぇ~舞彩もっと遊んでたいのにぃ
河合
じゃあ後でまた一緒に来よ
舞彩
郁兄ちゃん連れてきてくれるの?
河合
うん
舞彩
だったら帰ってもいいよ


そんな事とはつゆ知らず、俺はくぅーすか夢の中。

河合
忘れ物はない?
舞彩
大丈夫
河合
あれ?
舞彩
どうかしたの郁兄ちゃん
河合
舞彩ちゃん、ちょーっとバックの中
見せてくれる?
舞彩
はい
河合
うっそぉーっ!?


聞き覚えのある声が、聞こえた…ような気がした「気のせい気のせい、くぅーすか、くぅーすか…」




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