第6話

小さな冒険③藤ヶ谷→北山side
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2020/06/13 01:32
藤ヶ谷
ただいま~
お帰り太輔
藤ヶ谷
うおっ、いい匂いがする
手を洗ってらっしゃい、すぐ
ご飯ができるから


(さて北山は、お利口さんにしてたかな)

トントントン足運びも軽く階段を昇り自分の部屋へと急ぐ、すると。

藤ヶ谷
んっ?


(嫌な予感がする、扉が開いてるじゃん)

藤ヶ谷
母さん母さーん俺の部屋、掃除機
かけた?
当然でしょ


「ヤバい、頭になかった」慌てて中へと入り北山の姿を捜した。

藤ヶ谷
ひろ、ひろ、何処にいる返事を
してくれ


が、呼んでも答えがなく「嘘だろ?マジで」ベットや机の下、本棚に引き出しの中ありとあらゆる場所を捜したけれど見つからない。

(待て扉が開いていたということは廊下を出てあっちの部屋は親父の書斎だし閉まっていて入れなかったはずだ…えっ、階段を降りたのか!?あの小さな身体でバカ落ちて怪我でもしたらどうするんだよ怪我どころじゃない今のあいつなら命の危険性も)

ドドドドドッ!

太輔、もっと静かに降りなさい


が、床の隅々を見てみたけれど見つからず、ある
意味ホッと胸を撫で下ろす「あと考えられる場所は」そう思い周囲を見渡すと。

(ハッ、和室!)

北山
スースースーッ
藤ヶ谷
いたぁ~良かった


そこは座椅子の上、眠っている姿を見つめ安心しつつも「こいつ、何を食っていたんだ?」近くにあるポッキーの箱を見て、その姿と見比べ「えっ」よく見ると食べかけみたいのが側にあり。

(お腹が空いて…)

そーっと起こさないよう手のひらに乗せると自分の部屋へと連れて帰る。

太輔、ご飯は?
藤ヶ谷
部屋で食べるから後で取りに行くよ
そう


「ガチャ、バタン!」ベットの脇に置いてある朝の残りのパンとおかず…

藤ヶ谷
手をつけなかったんだ


と、そのとき。

北山
ん…ん~??んんっ?あれ‥なんで俺
藤ヶ谷
なんでだろうね
北山
ギクッ、たっ、太輔、お帰り、ハハッ
藤ヶ谷
北山お前、俺がいない間に
何をやっていたの?
北山
なに…って?アハッ


ひきつった笑いのひろ、こういう時だいたいが分かった上で行動を起こしている事が多い。

藤ヶ谷
ひろ!
北山
だっ、だってよ
藤ヶ谷
だってじゃない独りで階段なんか降りて落ちたりしたらどうするんだ
北山
だっ…大丈夫だって
藤ヶ谷
お前なぁ~俺がどれだけ心配したと
思っているんだよ
北山
たっ、太輔が…さ‥
藤ヶ谷
なに?


すると、こいつは眼にいっぱい涙を溜め。

北山
俺を独りにするからいけないんじゃ
ないかぁ~
藤ヶ谷
‥‥っ
北山
俺だって、ううっ、俺だってな…学校‥行きたかったのに、なのに…さ‥クッ


(ごめん…)

せきを切ったように泣く姿に、俺の心も切なく締めつけられる。

藤ヶ谷
泣くな
北山
学校…行きて‥もん
藤ヶ谷
ふぅ~


(だよな独りで留守番だなんて俺だって嫌だし)

藤ヶ谷
取り合えずメシでも食う?
北山
‥‥っ
藤ヶ谷
あっ、お前はポッキーを食ったから
お腹がパンパンか、クスッ
北山
ぽっ、ぽっ、ポッキーは
藤ヶ谷
残念だったな今日のおかずはチキン
ソテーだったのに、ニヤッ
北山
チキン!
藤ヶ谷
母さんのチキンソテー美味いんだ頬っぺたが落ちそうなくらいに、ふっ


すると、北山は。

北山
食うチキンソテー食う太輔ちょうだい
藤ヶ谷
どうしよっかなぁ~
北山
なんでもすっから
藤ヶ谷
ん?ニヤリ


(今、なんでもするって言ったよな何でもするって)

藤ヶ谷
俺の言うことは
北山
聞く聞く
藤ヶ谷
なら考えてやってもいいよ
北山
本当か


瞳をクルクルと輝かせ、食らいついて来る北山。「やばっ、マジでこいつ可愛いや」

数分後ー

北山
うっお~めっちゃ美味そうな
匂いがする
藤ヶ谷
クスッ、待っていろ今、皿を出して
やるから
北山
皿?


俺は例の店で買ってきた物をこいつの前に並べ見せてやった、するとテーブル食器・箸など次から次へ出てくる物に北山は。

北山
すっげ~すげ本物みたい、へぇーっ


瞳をキラキラと輝かせ、そこへ切った肉とかを盛ってやったら嬉しそうにニコッと微笑み。

北山
太輔、ありがとな
藤ヶ谷
ドキッ、おっ、おう…ハハッ


一瞬にして俺のハートをどきゅんと貫く「くっそ、可愛い抱きしめてやりたいくらいに」

藤ヶ谷
食べよ、ふっ
北山
おう、いっただきまーす、パクッ
うんめぇ
藤ヶ谷
んふふっ


(お前が笑うのなら俺はどんなことでもいとわない)

北山
太輔、マジでこれ美味しい
藤ヶ谷
だろ?ニコッ


(お前のためならば…)







・北山side
藤ヶ谷
クククッ、あははっ


俺の前で、腹を抱えて笑っている藤ヶ谷。

北山
うっ…
藤ヶ谷
ちょ~似合う超ティンカーベルみたいで可愛い


その数分前、昨日と同じく風呂へと入り。

北山
うっお、俺さま専用のお風呂じゃん


買ってきてくれた浴槽に満足して。

藤ヶ谷
ほら、こうすればシャワーにも
なるだろ


小さな小さなジョウロも俺にはちょうどよく。

北山
太輔、もっと、もっと掛けて


楽しいバスタイムは終了し。

藤ヶ谷
北山、タオルもあるよ
北山
Thank You、藤ヶ谷
藤ヶ谷
あと、ニヤッ


差し出された服を見て、固まってしまった。

北山
なに?それ
藤ヶ谷
んっ?服だけど
北山
ヒラヒラしてるじゃん
藤ヶ谷
女の子の服だからね、でもほら背中に羽が付いていて可愛いだろ
北山
‥‥‥


ニコッと笑う藤ヶ谷。

北山
変態
藤ヶ谷
はっ?
北山
変態、変態、ヘンタイ
藤ヶ谷
俺は宮田じゃねぇ
北山
こんなの俺に着せようだなんて考えるところが既に同じだろが


ぷーっと膨れると、こいつは。

藤ヶ谷
あっそ…さっきお前、俺の言うことなら何でも聞くって言わなかったっけ
北山
ギクッ…ずっ‥ズルいや
藤ヶ谷
はい宏光くん、お着替えしま
しょうねぇ~ニコッ


そして…

藤ヶ谷
なっ、カツラも被ってみない


俺は、すっかり藤ヶ谷の人形と化してしまい。

藤ヶ谷
次は家を買って来てやるな


(そういえば昔から可愛いものが大好きだったっけ)

藤ヶ谷
北山?
北山
んっ?


「こいつが喜ぶのなら、それでもいいか」そう思ってしまう自分は甘いのかもしれない、でも…

藤ヶ谷
布団と枕、大丈夫?
北山
おう、ふっ




精一杯に愛情を注いでくれる、そんな姿が嬉しかった。

藤ヶ谷
おやすみ、ひろ

(おやすみ太輔、大好きだよ今も昔も、これからも、ずーっと)




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