(さて北山は、お利口さんにしてたかな)
トントントン足運びも軽く階段を昇り自分の部屋へと急ぐ、すると。
(嫌な予感がする、扉が開いてるじゃん)
「ヤバい、頭になかった」慌てて中へと入り北山の姿を捜した。
が、呼んでも答えがなく「嘘だろ?マジで」ベットや机の下、本棚に引き出しの中ありとあらゆる場所を捜したけれど見つからない。
(待て扉が開いていたということは廊下を出てあっちの部屋は親父の書斎だし閉まっていて入れなかったはずだ…えっ、階段を降りたのか!?あの小さな身体でバカ落ちて怪我でもしたらどうするんだよ怪我どころじゃない今のあいつなら命の危険性も)
ドドドドドッ!
が、床の隅々を見てみたけれど見つからず、ある
意味ホッと胸を撫で下ろす「あと考えられる場所は」そう思い周囲を見渡すと。
(ハッ、和室!)
そこは座椅子の上、眠っている姿を見つめ安心しつつも「こいつ、何を食っていたんだ?」近くにあるポッキーの箱を見て、その姿と見比べ「えっ」よく見ると食べかけみたいのが側にあり。
(お腹が空いて…)
そーっと起こさないよう手のひらに乗せると自分の部屋へと連れて帰る。
「ガチャ、バタン!」ベットの脇に置いてある朝の残りのパンとおかず…
と、そのとき。
ひきつった笑いのひろ、こういう時だいたいが分かった上で行動を起こしている事が多い。
すると、こいつは眼にいっぱい涙を溜め。
(ごめん…)
せきを切ったように泣く姿に、俺の心も切なく締めつけられる。
(だよな独りで留守番だなんて俺だって嫌だし)
すると、北山は。
(今、なんでもするって言ったよな何でもするって)
瞳をクルクルと輝かせ、食らいついて来る北山。「やばっ、マジでこいつ可愛いや」
数分後ー
俺は例の店で買ってきた物をこいつの前に並べ見せてやった、するとテーブル食器・箸など次から次へ出てくる物に北山は。
瞳をキラキラと輝かせ、そこへ切った肉とかを盛ってやったら嬉しそうにニコッと微笑み。
一瞬にして俺のハートをどきゅんと貫く「くっそ、可愛い抱きしめてやりたいくらいに」
(お前が笑うのなら俺はどんなことでもいとわない)
(お前のためならば…)
・北山side
俺の前で、腹を抱えて笑っている藤ヶ谷。
その数分前、昨日と同じく風呂へと入り。
買ってきてくれた浴槽に満足して。
小さな小さなジョウロも俺にはちょうどよく。
楽しいバスタイムは終了し。
差し出された服を見て、固まってしまった。
ニコッと笑う藤ヶ谷。
ぷーっと膨れると、こいつは。
そして…
俺は、すっかり藤ヶ谷の人形と化してしまい。
(そういえば昔から可愛いものが大好きだったっけ)
「こいつが喜ぶのなら、それでもいいか」そう思ってしまう自分は甘いのかもしれない、でも…
精一杯に愛情を注いでくれる、そんな姿が嬉しかった。
(おやすみ太輔、大好きだよ今も昔も、これからも、ずーっと)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!