桃原くんは僕の腕を引っ張ってずんずん進んでいく。
どこに行くつもり?
着いた場所は屋上。
というか、そこに繋がる扉。
校則でいってはいけないことになってたし、鍵は閉まってるしで行こうと思った事もなかった。
でも、桃原くんは鉄の細い棒のようなものを取り出して、鍵穴に差し込み始めた。
僕は言葉につまった。
だって、何故かわからないから。
でもこのままじゃ"yes"の意味になる。
こんなことを考えている間も桃原くんの手は器用に動いている。
もうじき、ドアが開くだろう。
『諦めるしかない。』
本能でそう思った。
あ、、、
あのときの、、、
女の子を振ったときに見たあの顔だ、、、
かっこいい、、
でも、それはどこか冷たくて、、、
人の奥を見てるような、、、
そんな顔、、、
この人はなんなの?
不良なのに不良じゃない、、、
言葉では言い表せないこの感じ、、、
その笑顔で何を隠してるの?
何を見てるの?
何を考えてるの?
っ?
初めてきつく言われた。
初めて『お前』って言われた。
ドンッ!
壁ドン?
今、ころんって、、、呼ん、、、
あれ?
また、呼び方戻った、、、?
って、ええ!!?
僕なに言って、、、?
意外と責任感あるんだ、、、
くるりと後ろを向いた桃原くんは屋上から出ていった。
鉄の棒を残して。
それは、『入らない』という意味でもあり、僕に閉めろって事なんだろう。
僕は桃原くんの新しい一面を知った気がした。
でも、桃原くんへの謎は深まった。
そして、僕自身にも謎ができてしまった。
『何故キスされたとき嫌じゃなかったんだろう。』
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これから、この小説もどんどんやるので、お楽しみに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!