第81話

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2020/05/04 01:38





夢を見てる




楽しかった頃の夢






踊ってて、歌ってて、笑ってて。




幸せだったあの頃。










夢の間に聞こえるみんなの声も、

ちゃんと届いてる。





でも、最後まで聞く前に眠気が襲ってくるし、

曖昧な記憶の中で、誰がきたのか誰がいるのか全然わからない







無理やり酸素を送り込んでくる酸素マスクが、

あたしが死ぬのを強制的に止めてるみたいで、

生きろ、生きろ、って機械に生かされる私






動かさなくてもわかる、左手の麻痺。




最後に触ったのは、みっちーの髪やったかな。



いや、誰かの涙やったかも。









数日前に皆が集まってくれたけど

なんで集まったのか、そこで何をしたのか全く記憶にない








たぶん、年が明けた時。その少し前も。









嬉しそうなみんなの声を聞いた気がする。










あれ、今も誰かおる?私の名前、呼んでる?









____ あなたちゃん、









あぁ、うちらの可愛い末っ子か。







どう?順調?

疲れてない?大丈夫?






聞きたいのに、聞けない。


起きてるのに、起きられない。












末っ子、私の可愛い弟。





名前、なんやった?









_____ 謙杜、もういくで


_____ あなたちゃん、またね、








あぁ、謙杜だ、



一緒に来てるのは丈くん?










じゃあね、頑張って、







トン、というドアが閉まる乾いた音。




その音を合図に、私はまた眠りについた。

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