第77話

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2020/04/17 07:00
和也 Side






カチ、カチ、と時計の音が響く。






あまり意識しないまま、

日にちが経ったと思うけどわからない。











「 大橋くん、前向いて 」





「 あ、はい… 」











メイクさんの声で顔を上げる。





「 大橋くん、寝なきゃだめよ。

辛いのはわかるけど、寝なきゃ倒れるよ 」












「 …わかってます 」







そう、ならいいの、って

俺の髪をセットしながらたわいもない話をしてくれる。











「 あなたちゃんいつも言ってたよ 」





「 え? 」





「 幸せなんですよ、って 」





「 …幸せ 」














メイクさんの目も潤んでるような気がして

何も言えずに次の言葉を待つ。













「 ここにいれることが奇跡だし

メンバーと会えたのだって奇跡だから

無駄にはしたくない、って 」













「 そんなこと… 」














「 自分がいなくなった後のグループが崩れないように、

自分1人のせいで皆をどん底に連れて行かないように、って


それがあなたちゃんの目標だったのよ 」
















ほんまに、どこまでも自分は後回しやな。

















「 そんな顔してファンに会うなんて

あなたちゃんが許さないんやないの? 」

















そうや。



俺はこのグループを守らないと。

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