謙杜 Side
忙しい。
撮影やら、リハーサルやら、
なんで?ってぐらい忙しい。
あなたちゃんのとこにも行けてない。
最後に行ったのは、3日前の大吾くん。
大橋くんが行こうとしてたけど、
その頃にはもうとっくに面会時間を過ぎてた。
宿泊の許可も申請できない時間
3日前までは、
あなたちゃんから写真が随時送られてきてたのに
飽きたのかなんなのかそれもなくなった。
LINEも見てなくて、心配になってマネージャーに
聞いたけど大丈夫やで、としか言ってくれなかった。
「 なぁ、あなたちゃんの様子どうやった? 」
休憩の合間に、
お見舞いに行ってくれているマネージャーに
高橋くんが尋ねた。
「 2020年の事言っとったで。
オリンピックやなー、って 」
「 オリンピックは覚えてるんや、笑 」
「 ほぼ毎日報道されてるし覚えてるんやろ笑 」
流星くんも、久々にあなたちゃんの様子を聞けて喜んでた
「 ね、丈くん丈くん 」
「 ん? 」
「 今日仕事終わったら
皆でこっそり行ってみません? 」
丈くんの肩を組んで悪い顔をして提案してみた。
「 相変わらず謙杜は悪い子やなぁ笑 」
「 いいじゃないっすか、僕あなたちゃんに会いたいです 」
「 まぁな~、俺もあなたに会いたいし 」
行くかって丈くんが口の端を上げて笑って
その後の仕事はすこぶる早く終わった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!