『 ダメかも知んない 』
「 まだやれるって 」
『 全然覚えられへんもん 』
「 俺が教えるって言ったやん 」
『 本番中にわかんらんくなったらどうする? 』
「 俺がフォローする 」
最近、本当に覚えられない。忘れて行く一方。
初の全国ツアーの準備が進まない。
皆をイライラさせてる気がする
休みのないスケジュールで病院に行く暇もない。
『 最近、丈くんもめっちゃ体調気にしてくんの 』
「 あぁー、こないだなんか
あなた本気でボケてるんちゃう?って言ってたで 」
『 本気でボケてますよーだ 』
束の間の休憩でさえも
大吾は私をメンバーのいない所へ連れ出してくれるようになった
逆にそれを怪しんでるメンバーがいることも事実
『 みっちーもさ、私の顔色伺うんよね 』
「 道枝はな〜、第一発見者やから 」
やるぞーって声が、リハ場の中から聞こえてきて
行こうか、って2人で立ち上がる。
『 よし、 』
そう言って自分の足で自分の力で立てるのは、あと何回なんやろう
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!