駿佑 Side
「 道枝、部屋出とって、 」
慌てて帰ってきた大吾くんは、
俺を部屋から出してドアを閉めた。
何?何なん?
かすかに聞こえてくる
あなたちゃんが大吾くんを呼ぶ声と
大丈夫やで、って慰めるような大吾くんの声
なんで大吾くんなん?なんで?
何にもわからず、
ただ部屋の前で突っ立ってるしかなかった。
どれくらい時間が経ったのかわからない
部屋から大吾くんが出てきて、
俺の手を引いてリビングに座らせた。
「 さっきのこと、誰にも言わんといてや 」
「 なんで?あなたちゃんどうしたんですか? 」
「 なんでもないよ、体調崩してるだけやから 」
そんな風には見えなかったけど
ぽつりと言葉を落とした。
「 道枝、 」
「 おかしい、立ち上がったら急にぼーっとして右手が震えてて
息苦しそうにして倒れたんですよ? 」
「 貧血や 」
「 嘘や、貧血だけやったら
あなたちゃんはわざわざ大吾くん呼ばないです 」
「 、あまり詮索せんといて
気になるんやったら直接聞いてき 」
何隠してるんですか?どうしてそれを隠してるん?
なんで大吾くんは知ってるん
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。