謙杜 Side
あなたちゃん?
あなたちゃんは今、なんで泣いてるん?
何かを振り切ったようにすっごい笑顔で泣くから
つられてちょっと僕も泣いちゃって
「 あなたちゃん? 」
バチって目があったかと思うと、
僕を両腕で抱きしめて
僕の首元にあなたちゃんが顔を埋める
僕よりも背の小さいあなたちゃんは
僕を離すと、左耳のイヤモニをはずして
僕を見つめて微笑んだ。
『 大きくなったね、 』
金と銀の紙吹雪が舞う中、
スローモーションのように聞こえたあなたちゃんの声
たったそれだけやのに、涙が溢れたのはなんでやろう
ファンの前だと言うことも忘れて、
みっちーのとこに行こうとする
あなたちゃんの左手を引っ張った。
『 謙杜? 』
「 やだよ、あなたちゃん、 」
ただの怪我じゃないんやろ?
簡単な怪我じゃないんやろ?
それぐらい分かるよ、
「 いやや、あなたちゃん、だめですよ 」
『 …なに言ってるん笑 』
「 僕、あなたちゃんのこと大好きです、 」
『 私も謙杜のこと大好きだよ 』
泣かんといてよ、って僕の頭をポンポンして
ほら、前向いてって笑って
みっちーと流星くんのところへ行った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。