丈一郎 Side
昨日の今日だったから心配で
自分のオープニング撮影が終わってから、
マネージャーにあなたの現場に連れてきて貰った
波打ち際で、車椅子に乗って海の向こうを見てて。
はいっ、って監督が言った瞬間、
モニターの向こうのあなたが、
ぽろっと涙をこぼした。
「 おぉー、完璧だね 」
監督がそう言ってカットの声がかかる。
へへってわらったあなたは涙を拭いて
スタッフさんに車椅子を押してもらって戻ってきた
『 お、丈くん! 』
「 順調? 」
『 もちろん〜笑
丈くん、今日オフなん? 』
朝、みんなで家出たやん…
「 今日は皆ツアーのオープニング撮影やで
場所バラバラやけど笑 」
『 丈くんはどこで撮ったの? 』
「 スタジオやった。
コンセプトが今いち掴まれへんかったわ笑 」
あかんやん、ってあなたが笑う。
『 最後の撮影かもなー、 』
「 え? 」
『 ほら、入院したらさ今よりも病気進行するやろうし、
たぶん最後なんやろうなぁって 』
「 オリジナルのROTでも撮ればええやん 」
『 あは、ドキュメンタリー? 』
「 よくない?笑 」
本気でいいと思う、ドキュメンタリー。
あなたが頑張ってる姿見て貰おうや、
「 あなた、病名公表せーへん? 」
『 なんで? 』
「 世界にはあなたと同じような人が
少なからずいるねんで。
諦めないで一生懸命頑張ってる姿見たら
みんな勇気付けられると思う 」
本気で言ってる?って
俺の目の深いところを見つめてくる。
「 やろうや、あなたは生きてるんやで?
入院して病気の進行のこと考えて暮らすより
入院しても人に希望を与えられることを選ぼうや 」
カメラの前で自分を見せるの嫌いじゃないやろ?
そこまで言って畳み掛ける。
この仕事が大好きな子やから。
「 歌だって歌えばいい。
編集だって俺達がお安い御用でやるし 」
『 いいん? 』
少し、希望が見えた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。