『 すみません、迷惑かけて 』
スタッフさんに頭を下げて
大丈夫だよ、って返してくれるけど、
それが本心じゃない気がして目も合わせる事ができなかった
大阪の病院に行きたいけど、あいにくここは東京。
生放送を終えて、ひどくなった症状。
公式で出してもらった情報は
右半身の痛みじゃなくて、痺れだし
医師の診断じゃなくて、自分の判断。
色んな人に嘘ついて
それでもここにいる意味って、なんやろう、
私がなにわ男子である意味って、どこにあるんやろ
病気になると、心もこんなに荒くなるんやって自分に笑えてくる
_____ コンコン。
『 はい 』
「 きたよー 」
ホテルの部屋のドアを開けると、曖昧な顔で笑う流星が立ってた
お土産って渡してくれるコンビニの袋を左手で受け取って、
痺れる右半身を何事もないようにする
『 どうしたん、 』
「 うん、なんか、一緒にいたくて 」
『 …いろいろ、ごめんね 』
「 あなたちゃんが謝ることじゃないやん 」
沈黙でさえも、なぜか流星とは耐えられる。
昔っからからそんな関係だった。
「 あなたちゃん、右手出して? 」
『 ん? 』
痺れたままの左手を差し出すと、なにかを塗り始めた。
『 流星、 』
「 温感クリーム。右手、疲れたやろ? 」
浮腫んでるし震えてる、って
ふわっと笑って、私の右手を優しくマッサージしてくれる
ポタ、と込み上げてくるものが
ベットのシーツにシミを作る
『 ごめ、私、 』
「 いいんねんで、 」
『 みっちーの言う通り…裏切っ「 違うよ 」
流星は、強い目で私の言葉を遮った。
「 あなたちゃんは、僕達を守る為の嘘をついただけ
それはなにも悪いことじゃない 」
何も聞かずに、
気づいてるけど何も言わずに、
ただ側に寄り添ってくれた。
「 大ちゃんでもいいけどさ。
何も聞かへんから困った事あったら僕にも言って? 」
「 ありがと、流星、 」
「 あとね、みっちーも謝ってたで 」
ふふっ、て笑う流星が、
側にいてくれるだけで、安心できた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。