第29話

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2020/04/29 08:28




『 すみません、迷惑かけて 』




スタッフさんに頭を下げて

大丈夫だよ、って返してくれるけど、

それが本心じゃない気がして目も合わせる事ができなかった




大阪の病院に行きたいけど、あいにくここは東京。


生放送を終えて、ひどくなった症状。






公式で出してもらった情報は

右半身の痛みじゃなくて、痺れだし

医師の診断じゃなくて、自分の判断。





色んな人に嘘ついて


それでもここにいる意味って、なんやろう、






私がなにわ男子である意味って、どこにあるんやろ





病気になると、心もこんなに荒くなるんやって自分に笑えてくる








_____ コンコン。







『 はい 』






「 きたよー 」





ホテルの部屋のドアを開けると、曖昧な顔で笑う流星が立ってた








お土産って渡してくれるコンビニの袋を左手で受け取って、

痺れる右半身を何事もないようにする







『 どうしたん、 』





「 うん、なんか、一緒にいたくて 」





『 …いろいろ、ごめんね 』





「 あなたちゃんが謝ることじゃないやん 」





沈黙でさえも、なぜか流星とは耐えられる。


昔っからからそんな関係だった。






「 あなたちゃん、右手出して? 」




『 ん? 』





痺れたままの左手を差し出すと、なにかを塗り始めた。





『 流星、 』





「 温感クリーム。右手、疲れたやろ? 」





浮腫んでるし震えてる、って


ふわっと笑って、私の右手を優しくマッサージしてくれる







ポタ、と込み上げてくるものが


ベットのシーツにシミを作る








『 ごめ、私、 』






「 いいんねんで、 」






『 みっちーの言う通り…裏切っ「 違うよ 」






流星は、強い目で私の言葉を遮った。






「 あなたちゃんは、僕達を守る為の嘘をついただけ


それはなにも悪いことじゃない 」







何も聞かずに、


気づいてるけど何も言わずに、


ただ側に寄り添ってくれた。









「 大ちゃんでもいいけどさ。


何も聞かへんから困った事あったら僕にも言って? 」









「 ありがと、流星、 」









「 あとね、みっちーも謝ってたで 」





ふふっ、て笑う流星が、


側にいてくれるだけで、安心できた

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