第27話

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2018/07/31 04:05

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電車に乗ってる間、何も喋らなかった。




その間20分弱。




だけど、ちっとも苦痛じゃなかった。




私の右手はジョングクに握られたまま




ずっとポケットに入ってて




たまに、軽く力が篭ったり。




こういう事も久しぶりだから




なんだかとってもくすぐったかった。




......さっき、あんな事があったのが嘘みたい。




あんなに酷くされたのに




憎めないのはなんでだろう。




ジョングクの内面が




なんとなくだけど見えたから....?




「.....ここはどっち?」


「あ、ごめんね。左、」


「ん」




電車を降りてからも




道順を聞く以外はずっと黙ってる。




でも考えてみたら




お互いの事何も知らないんだから




会話がないのは当たり前だ。




.....そういえば




さっき、チラッと見えたICカード。




きちんとした定期入れに入ってた。




遊んでるのは週末だけで




平日はちゃんと学校行ってるのかな、なんて。




......あのチャラさは許せないけど。




「ジョングク、ごめん。ウチここなの、」




危ない。通り過ぎるところだった。




「......綺麗なアパートだね」


「....うん、出来たばっかりだから」


「ふぅん......」


「あの.....手、」





いつまでも手を離そうとしないジョングクに
訴えてみる。




「......あったかかったでしょ?」


「うん.....おかげであったまった」




だけど、私の手はポケットから出て来ない。




「......ねえ、」


「また会いたい」


「え....」


「会いたい。会える......?」




ポケットの中の手が




ぎゅうって握られた。




会いたい、ってなんで......?




「平日は学校とバイトだから、
どうしても週末になるけど、」


「や....でも、」


「あなたは俺と会いたくない....?」


「そういう事じゃ、」


「じゃあ会いたい」




どうしよう。




ジョングクと会ってもいいの.....?




「WINGSでいい?」




......あそこは、




「俺と一緒にいれば大丈夫。
アイツには触れさせないから」




......インソンさんの事だよね。




でも、会っちゃったらきっと気まずいし、




「それとも、もうあんなとこ嫌だ....?」




正直言うと、いい思い出のないあそこは




出来れば行きたくない。






「......でも、俺の居場所はあそこだけだから」







あそこだけ、って......。









どういう事.....?





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