第25話

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2018/07/31 04:04

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「あなた......ごめん、」




ジョングクでも謝る事あるんだ、なんて




半ば放心状態の頭で考える。




お互い、広いソファの端と端に座って




さっきからずっと背を向けたまま。




「アイツにキスされてるのが
あなただってわかった瞬間、
いても立ってもいられなくなって、」


「....」


「自分でも、なんでああしたのかわからない。
ただ、あなたが他の男に触れられてるのが嫌で、」


「....」


「だけど、アイツを追い払ったら追い払ったで、
なんでこんなとこ付いて来てんだ、とか
何好き勝手やらせてるんだ、って頭来て、」


「....」


「......酷くしたのは謝る。だけど、あなたは、」




ジョングクが動く気配がしたから




顔を少し動かした。




......苦しそうな、顔してる。




なんで......?




「あなたは、俺の何......?」


「え....?」


「なんでこんなに執着すんの?
なんでこんなに欲しくなんの?
なんでこんなに......っ」




ジョングク......?




「女なんて、みんな同じだと思ってたのに.....。
なんでだかわかんないけどあなたは違ってて、」





......女の子はみんな、
ジョングクの外見しか見てない、って話?




それって、裏を返せば




内面を見てくれる人がいない、って事?




ジョングクは、本当の恋を知らないの?




誰かを心から好きになった事ないの?




もしかして、寂しいの....?




「......これ、返す」


「あ....」




ジョングクが差し出したのは




あの日、私がホテルに置いて来たポチ袋。




「......でも、」


「......こんな事する女も初めて」


「だけど、」


「いらない。別に困ってないし、
俺があなたを抱きたかっただけだから」




....改めて言われると、なんか気まずい。




恥ずかしい、のかな。




酷く抱かれたあとなのに、変な私。




「とにかくこれは返す。あと......ありがとう。
それから、ごめん」




ジョングクはそう言うと立ち上がった。




「落ち着いたら送ってくから声掛けて。
下のカウンターにいるから」


「....大丈夫、一人で帰れるから、」


「ダメ、送ってく。絶対声掛けて。
あと、ここにあるもんは使っていいから」




それだけ言うと




ジョングクは部屋を出て行った。




一人になると、部屋が広すぎて
虚しさが込み上げる。





「....っ、」






ついでに涙まで込み上げて来るなんて








やっぱり私、どうかしてるんだ。




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