第34話

34
4,929
2018/08/02 09:15

.



「....何飲む?」




部屋に入るなり、ジョングクが言う。




この間とは違う部屋で




狭いけど、雰囲気が明るい部屋だった。




……気を遣ってくれたのかな。




「あなた....?」


「あ......じゃあ、モヒート、」


「わかった」




ジョングクは、ドアを開けて顔を出すと




すぐそこに誰か控えてるのか、
二言三言、言葉を交わす。




「今日は.....ここにいて」




戻って来ると




そんな事を言いながら私の隣に座る。




「......踊りに行かないの?」


「......今日はあなたといる」




......会話が続かない。




目の前の大きな窓からは




きらびやかな、階下のフロアが見える。




「そこって......どの部屋からも見えるの?」




フロアを見下ろしながら、聞いてみる。




「全部、フロアに面して造ってある」


「......そうなんだ」




......終わっちゃった。




話題を探そうとしたら




「......アイツ、なんなの?」




ジョングクが口を開いた。




「なんなの、って.....?」


「前からあんな?」


「......会って間もないからわからない」


「....彼女の友達に手ぇ出すとか、」




女の子取っ替え引っ替えして遊んでる人の
セリフとは思えない......。




「......そんなの、」


「あのおねーさん.....アヨン、だっけ?」


「....うん」


「アイツ、やめた方がいいよ。
そのうち捨てられる。
そういうタイプだよ、あの男」




フロアを見下ろしたまま、そんな事を言う。




「でも、付き合い始めたばっかりだし、
なんて言えばいいのかわからないし、」


「付き合い始めたばっかなの?」


「......うん」


「とんでもないヤツじゃん.....」




......アンタだって同類でしょ、
って言葉は飲み込んだ。




「でも、あなたはここ以外では
会わないんでしょ?」




私に向き直った、綺麗な顔。




「....そうだけど、」


「じゃあ、今度から他で会おう」


「え」


「なに?」


「....今度から、って、」


「今日だけじゃないから」


「だからなんで、」


「会いたいから」


「だから、」


「知りたいんだよ」


「え...」




黒い瞳に見つめられる。




「なんで俺がこんなんなってるのか、
俺をこんなふうにするあなたが......
どんな女なのか」





綺麗な顔がゆっくり近付いて来るけど







どこにも触れられてないのに動けない。








だって、なんでそんな事言うの......?




.

プリ小説オーディオドラマ