第9話

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2018/07/30 11:13

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お店の前には人が多かったけど




店内に入ってみればそうでもなかった。




まだ時間が早いからかな。




「あなたさん、お酒強そうですね?笑」


「そんな事ないと思いますよ?
飲める方だとは思いますけど。笑」


「そういうのを強いって言うんですよ。笑」




インソンさんは営業をしてるらしく




初対面の私にも、気さくに接してくれる。




「......アヨン、いい人に捕まったね?笑」


「ふふふ....でしょ?笑」




アヨンに小声で耳打ちする。




とりあえず飲みましょう、って事になって
飲み始めたけど




意外と楽しくて
帰るタイミングを失ってしまった。




時間的にはまだ早いけど




.....アイツにだけは会いたくない。




「ね、そろそろ少し踊らない?笑」


「....そうだね。あなたさんも行こう?笑」


「え、私は、」


「あなたも行こうよ?
先週は踊ってないんだし。笑」


「わ、」




アヨンに手を引かれて
フロアへ連れて行かれる。




音楽センスない訳じゃないと思うんだけど




身体動かすのって苦手なんだよね......。




「あなた踊れるじゃん!笑」


「そんな事ないよ......!」




これ、踊ってるうちに入るの......?




やっぱりなんか恥ずかしくて




アヨンとインソンさんが
仲良さげにくっついてるのを確認すると




踊ってるフリしながらフロアをあとにする。




「......やっぱり無理」




カウンターに戻って




モヒートを喉に流し込む。




「......帰ろ」




まだタバコの煙も充満しきる前で
そんなに居心地は悪くないけど




長居は無用。




今のうちにさっさと帰った方がいい。




アヨンにはあとでカトクすればいいし。




って.....インソンさんには失礼だな。




黙って帰るなんて。




でもま、いっか。




もう会う事ないだろうし。




そんな事を考えながら




帰る前にトイレに寄って用を済ませる。




......と、




「ぁ、ん.....」




トイレを出ると、何やら悩ましい声が聞こえる。




来る時はいなかったのに




いつの間に来たのか




めっちゃ密着してキスしてるカップル。





リップ音すごいし





......男の人、腰押し付けすぎでしょ。






ていうかこんなとこでやめてよ。






通れないじゃん......







ってヤバい。








男の人の方と目が.......って、え。









......チャラ男だ。





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