第10話

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2018/07/30 11:15

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「......あれ、おねーさん?」




......最悪。




見過ぎたせいで見つかった。




だけど、チャラ男は忙しいみたいだから
とりあえずこの場を去ろう。




声掛けられたけど無視して通り過ぎようとしたら




「待ってよ」


「っ」




何故か腕を掴まれた。




片手はまだ、女の子の腰を抱いたまま。




「俺に会いに来たの?」




薄暗いからはっきりとはわからないけど




うっすら笑ってるようにも見える。




「.....そんな訳ないでしょ。離してよ」


「ふーん....今日は強気だね?」




いいから、離してよ。




女の子に睨まれてる気がするから。




「悪いんだけどまた今度ね?」


「....え、なんで?その人誰?」


「誰だっていいだろ?アンタには関係ない」




いたたまれなくなってる私をよそに




そんな会話をしてるチャラ男と女の子。




気に入って引っ掛けた子だろうに




口答えは許さないとばかりに冷たい言葉。




チャラ男が腰から手を離すと




女の子は悔しそうに私を睨んで(たぶん)
フロアの方へ走って行った。




「せっかく会えたんだし、遊ぼうよ?笑」




コイツが言ってる“遊ぼうよ”の意味は
なんなのか。




さっきとは打って変わって




暗がりでもわかる笑顔を私に向けるチャラ男。




「......間に合ってますって言いました」


「週末にこんなとこ来てて
“間に合ってます”はないでしょ?笑」


「...私は、友達に誘われて仕方なく、」


「そういう事にしておいてやるよ。笑」


「なに言って......っ!」




腕を掴んでた手とは反対の手が




あっという間に私の腰を引き寄せて




さっきまで女の子のポジションだった
壁に押し付けられると




......唇を塞がれた。




しかも、いきなり舌を入れて来るし。




「....んっ、や....っ」




逃げても逃げても追いかけて来て




とうとうしっかり絡められた時




......私は抵抗するのをやめた。




なんでだかわからないけど。




「ん....っふ、」




キスをするのも久しぶりだから、かな。




......相手はチャラ男なのに。




気が付いたらさっきの女の子みたいに
腰を押し付けられてて




明らか変化してるチャラ男に、我に返った。




「.....っ、いや、っ」





やっとの事で拒否すると






「....なんで?....俺のキス、気持ちいいでしょ?」








......一瞬でも抵抗をやめた自分を呪いたい。





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