第26話

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2018/07/31 04:04

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「......ジョングク、くん、」




涙も収まって




気持ちも落ち着いた頃




階下に降りて、ジョングクに声を掛けた。




ジョングクは、
私達がいたのとは別のカウンターにいて




なんだかキツそうなお酒を飲んでいた。




「......落ち着いたの?」


「......うん」


「じゃあ送る」




ジョングクはグラスを置いて立ち上がる。




......そっか。




こんな所に出入りするくらいなんだから
未成年じゃないんだよね。




お酒も飲んでるし。




……そういえば、よくよく考えたら




多少のドレスコードがあるのに




ジョングクはいつも、ジーンズにTシャツに
ゴツいブーツを履いてる。




オーナーの息子だから特別待遇、って事か。




そんなどうでもいい事を




ジョングクの背中を見つめながら考える。




「......家、どこ?」


「え....この近くの駅まででいいよ?」


「そんな訳にいかない。どこ?」




ジョングクは、思ったより悪いヤツじゃ
ないのかも知れない。




だけど、家まで送ってもらうのは抵抗がある。




「遠いの?」


「....別に、遠くはないけど、」


「終電間に合う距離なら送ってく」




折れてはくれない、のかな。




腕時計を確認すると




行って戻っても終電には間に合う時間だけど......。




「警戒すんなよ。もうなんにもしないから」




......やっぱりお見通し。




「家がわかったからって付き纏ったりしないし」




なんか悔しい......。




「だからどこ?」




ずっと前を向いたままだったジョングクが
やっとこっちを向いた。




「◯号線の☓☓駅....」


「....わかった」




そう言うと、ジョングクは私の手を握った。




ポケットに入ってた手はあったかい。




「......手、冷たいな」


「.....冷え性だから、」


「ふぅん......」




私の手を握ってるジョングクの手が




またポケットに戻る。




「この方があったかいでしょ?」


「......うん」





なんか....調子狂う。





だって、予想外に優しい。






「ジョングク、くん、」


「さっきから気になってたんだけど、
なんでセパレートすんの」


「だって、」


「呼び捨てでいいよ。笑」







ジョングクの笑顔にきゅんとする。








「......ジョングク、ありがとう」









ジョングクの顔は、もう見れなかった。




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