第16話

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2018/07/30 11:30

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......私も充分サイテーだ。




だって、結局ヤッちゃった.....。




こんな所であんな雰囲気出されたら
誰だってその気になっちゃうって言うか、




ていうかそもそも




どんな理由であれ、付いて来た時点でアウトだ。




その気がある、って取られても仕方ない。




私って、流される女だったんだな......。




だけど、言葉とは裏腹に




ジョングクのキスは甘くて




さっきまでの強引さは何だったの?
っていうくらい優しかった。




もちろん、私に触れる全ても優しくて




相手がジョングクだっていう事も
忘れるくらいだったけど




他の女の子もこうやって抱くのかな、
って思ったら




何故だか胸がチクっと痛んだ。




あれは、なんだったんだろう......。




ジョングクに特別な感情なんて
抱く訳ないのに。




でも、ジョングクの腕の中は心地よかった。




だって、優しいだけじゃない。




私の事、大事そうに抱くから......。




「......ああ、もうわかんない」




私も、ジョングクも。




バスタブに張った綺麗な紫色のお湯を見つめる。




......ジョングクは、こんな感じ。




初めて会った時の




張り付いたTシャツが見せてた通りの
綺麗な身体で




若いくせに




甘くて......時折妖しい、紫色みたいな。




こんなに鮮明に記憶に残っちゃって
どうするんだろ。




もう会う事もないのに




ずっと考えちゃうの......?




ううん、忘れよう。




チャラいジョングクの事も




そんなジョングクに引っ掛かった
バカな私の事も。




バスタブから上がって身体を拭く。




ふと、鏡に映った自分を見ると




首筋や胸に




幾つかの紅い痕。




......なに、こんなの付けてんの?




「......信じらんない」




その痕を隠すように急いで服を着ると




髪にブラシを通して




みっともなくない程度にメイクも直す。




朝イチだったら人も少ないし、
こんなもんで大丈夫でしょ。




......そっと部屋に戻ると




ジョングクは気持ちよさそうに
くるまって眠ってる。




まあ、優しかったけど激しかったからね。




私がそのまま眠っちゃうくらい。





気付かれないように小さくため息をつくと






バッグの中から常備してるポチ袋を取り出す。







そこに、いくらかのホテル代を入れて








ベッドサイドのテーブルの上に置くと









私はそっと、部屋を出た。





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